龍王封印

 * * * *


 アレンはサーヤを龍王が住み始めてしまった湖へと案内すると、そこには我が物顔で鎮座し、居座る龍王が人の状態で待ち構えていた。


「む・・・!?われを倒しに来たのならば、

 返り討ちにしてくれよう」


「返り討ち?!冗談じゃないわよ!

 貴方の所為せいで、何千年も、

 この世界に異世界人を召喚して来たと思っているの?!」


「・・・それを言われてしまうと、何とも言えぬ」


「龍の宮に住まう女性たちは、そんなにもいないの?」


「い、い、いや…そのっ・・・」


 言い訳をしようとする態度でサーヤはピンときた。


「・・・まさかと思うけれど、

 聖女を娶る為異世界召喚をさせていた訳じゃ…

 ないでしょうね?!」


 大きく目を見開いた事で龍王は肯定してしまった。


 ここぞとばかりにサーヤは畳みかけるように攻め立てて行く事にした。


あきれた・・・。

 まさかと思ってたのに、

 聖女を強引に嫁として招き入れる為に、

 異世界召喚していたとか…信じられない」


「・・・宮に住む女性たちは…

 その…な…多く…「アンタ馬鹿?」」


 龍王を「アンタ」呼ばわり出来るのは、聖女と龍王が立場的に同じだと初代龍王が定めたからではある。


「なっ?!」


 竜王とサーヤの言い合いに、静観するしか出来ていなかったアレンは、龍王に対して馬鹿と発言する聖女は、歴史書に残る記録は無いと驚いていた。


「アンタ、王様でしょ!?

 だったらめかけの1人や2人、

 囲ったって文句を言われたりしないと何故、

 判んないのよ!」


「あ・・・」


 今、ようやく判りました!と顔に書いてあるけど、龍王に容赦はしないわ!


「異世界から呼び寄せた聖女を強引な手段で妻にして、

 正気でいられる訳が無いでしょ!?」


「そう、だが…宮の娘は…その、な…」


「それ以上、何か発言したら許さないわよ?!

 やっぱり封印しようかしら…」


 怒り心頭な顔つきで龍王を睨みつけるサーヤ。


めてくれっ!それだけは!!」


「アンナは何てデリカシーの無い王なの?!

 女性を傷つけるだけ傷つけて、

 取り返しのつかない心の傷をも刻んで、

 放置して来たんでしょ。もう許しません!

 今日限りで龍宮との連絡通路を断ち切り、

 お前を二度と人間界へ来れないよう封印する!!」


「待って・・・」


 詠唱もせず、イメージだけで龍王を強引に宮へと戻し、人間界と龍宮の通路に鍵を掛けて二度と、干渉できない細工を施すと、それまで龍王が勝手に掛けていた魔法すら溶け、グラシオールの王都を覆って居た木々が枯れて行く。



 * * * *


「まさか!王都が廃墟と化したのは、

 龍王の仕業しわざだったのか!?」


「・・・どうやら、

 その『まさか』だったみたいです。

 絡んで居たつたでさえ、

 枯れているのですもの。

 まったく、我がままの極みだったのね」


 こんなアッサリと封印してしまうサーヤは聖女なのだと、改めて痛感したアレンは、聖なる村から王都へ人々を戻すべく動く事になりそうだ、と気合を入れたのだ

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