廃墟と化し始める王都
その頃、王都の街では人々が厄災から逃れる為に次々と、王都を捨て新たな土地を目指し始めて居た。
「この状況を王様はご存知だろうか?」
「知らないだろうな。
ぬくぬくと、王城に居座ったままでは状況確認など無理じゃ無いか?」
「確かにな」
「その原因が第一王子ともなれば、
例え隣国に王子を婿入りさせても平和な生活を奪った事に変わりは無い」
「こうなってしまって居る事にすら気付いて無い可能性も有るし、な」
「違いない」
1人…又1人と王都から脱出する民が続出して居る事に王は気づいて居なかった。
そして、その現実を知る事となったのは、第一王子を隣国へ送り出す為に王城テラスから街を見下ろした時。
「なっ?!何だ!何が起きておるのだ!!宰相!」
「はっ…はい…ただい・・・ま…お傍・・・に」
「
「わ、判り兼ねます。私も今、この状況を知り得ましたので…」
事前にエヴァンの処分を伝える事を立て札にて知らせては居たが、テラスに出た先で見た光景は民が人っ子一人、居ないのだ。
「まさか…エヴァンのしでかした事が噂となり尾ひれがつき…
こうなってしまった、とは言わぬだろうな」
「…その可能性は捨てきれないでしょう。
エヴァン様が聖女様を置き去りにしてしまった事実は塗り替える事が出来ませぬ」
「くっ…エヴァンをこれへ!」
「「「はっ」」」
第一騎士団が戻らぬ中、城を守るのは近衛兵のみ。
本来なら自分たちも王都から逃げ出したいと考えて居たのだが、何も知らぬ王を残して去る事が
そして縄に繋がれ連れて来られたエヴァンに王は怒りを込めて外を指差した。
「エヴァン!そなたの失態が招いた結果を、その目で良く見よ!!」
「なっ・・・?!」
「そなたが…そなたが鑑定を怠らなければ…
間違った判断を下さなければ…暴走さえ…
しなければ!!こんな事には!!!!」
「も、も、も、も、申し訳あり…
「謝罪などいらぬ!今すぐ聖女様を連れ戻せ!」無理ですっ」
言い合いを初めてしまった姿を見た近衛兵も、この国は終わった…と感じ、王や宰相、そして王子を残し姿を消してしまう。
「それに比べ、王都から流出した者たちが
『名も無き村』に集い平和で豊かな暮らしをして居ると聞く。
もしや聖女様が居るのではないか?
と噂されておるが確認のしようも…ないだろうな」
「何故です!近衛兵を使・・・
「兵など誰1人として残っておらぬわ」え!?」
「そなたの目は節穴なのか?」
王から指摘を受けたエヴァンが城内を見渡すも、そこに居る筈の近衛の姿もメイドの姿も誰1人として残って居ない事が伺えた。
「そ、そんな・・・」
「今更、気づいても遅い。
この城も街も王都も、
厄災が襲い来るのも時間の問題だ。王妃よ…」
「はい・・・王様・・・」
「そなたまで巻き込む事になろうとは思いもしなかった、
私を許して欲しい」
「そんなっ!王様っ…どうか…
どうか最後までお供を…「ならぬ」」
「ち、父上?!」
「こうなっては隣国との縁談も処罰とならぬであろう。
身の処遇くらい自分で決めるが良い」
「嫌で御座います!父上!!後生ですから、それだけは!!」
「王妃よ、そなたは『名も無き村』に向かえ。
かの地ならば安心して暮らせるで有ろう」
「嫌で御座います!
王様だけを犠牲になど出来ませぬ!
わたくしにも罪が御座います!どうか、どうか!!」
「王妃・・・判った。一緒に償おう」
「父上っ!!」
「…そなたには心底、見損なった。
自害なりして果てろ」
そう言い残した王と王妃は連れだって厄災が訪れるで有ろう場所へと徒歩で向かい、王城には第一王子の馬鹿げた叫び声だけが残されるのだった
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