それぞれに刻まれた罪の烙印

 龍王から刻まれた烙印は、それぞれに場所と意味が違うのだ。


 形的には小さな魔法陣などでは有るが、王は背中、王妃は胸元、エヴァンは腕に刻まれた。


 王に刻まれた烙印は「聖女」と言えないよう組み込まれ、王妃に刻まれた烙印は「エヴァン」と言えないよう組み込まれた。


 そしてエヴァンは言葉自体を発する事が封印されている為、音として出ない状態となったのだ。


「我らが犯してしまった罪は幻で見たからでは無いが重い。

 罪として認識されてしまった言葉すら、

 口に出す事を許されぬ事となろうとは…」


「陛下…」


「全てはエヴァンあれが、

 召喚の儀式に立ち会ってしまった事が発端ではあるのだが、

 後悔しても時を遡る事は出来ぬからな」


「第一王子では無く、

 アレンが立ち会っていれば、

 此度こたびの悲運は変わっていたのでしょうか」


「判らぬ・・・判らぬが、

 罪の烙印を押される事無かったやも知れぬな」


 アレンによって王家の牢獄に入っている王妃と王が、格子窓を見上げ今後、自分たちの処遇はアレンが決める事になるだろう、と自分たちの罪を認めながらも龍王に対しての贖罪の日々を送らなければならない。


「王妃が刻まれた烙印は『エヴァン』の名を封じた魔法陣のようだ」


「ええ。

 先ほど言葉に出そうとしましたが、

 言葉にならなかったので第一王子と言うしか有りませんでした。

 王様が刻まれてしまわれたのは『聖女』様…ですか。

 必ず言葉にせねばならぬ、

 聖女様を呼ぶ事すら禁止されるとは思っていませんでした」


わしとてを封じられると思わなんだ。

 それにしても…エヴァンは見た目で恥にしかなっておらぬな」


 王と王妃の視線が別の牢屋に向けられると、言葉になってないにも関わらず、何かしらをわめきき散らしている姿だった。


「***************************

 (何故、言葉にならぬのだ!私はなのだぞ?!言葉を返せ!)」


「…馬鹿すぎる故の罪…と言う事であろうな」


「そう、かもしれません」


 互いに刻まれた罪の烙印を確認した王家の面々。


 アレンの采配で彼に罪が刻まれるか否か・・・も掛かっている。


 聖なる村での行動は、全て龍王の監視下にあり、どのような行動をアレンが取り、聖女で有るサーヤと接するか…高みの見物…と言う事となるのだと、この時に決まったとも言えるのだろう

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