言葉を封じられたエヴァン
聖女召喚を行った直後、俺が謁見の間に連れて行ったのは、まさかの男性だった。
聖女を置き去りにしてしまった罪から牢屋へ入れられてしまい、龍王様から罪の烙印として言葉を封じられてしまった。
それだけでなく、歴代の聖女様から恨みの籠った言葉を掛けられ、置き去りにした場面を何度も見せられ、何度も同じ事を繰り返してしまう俺は、どうやら1つ2つ…もしかしたら数えきれない程「何か」が「足りない」のだろうと自分自身を恥じるしか出来なかった。
何故なら反省の弁すら発する事を禁じられたからだった。
勿論、その状態で意思疎通は出来ないからと、紙と羽ペンは与えられているのだが、会話するのと書くでは断然、会話する方が早いに決まっている。
だからこそ、紙に自分の言葉をしたためる、と言う行為を嫌だと思ってしまい、だんまりを通していた。
* * * *
そんなある日、両親と宰相の罪が許され、烙印が体から綺麗に消え、王城へと戻る事も許された。
にも関わらず俺は、王城の地下牢に入れられたまま。
(くそっ!聖女様は俺に何故、
ここまで酷い仕打ちをするんだ!?
俺だって許され聖女との結婚も許されて、
俺の考えは龍王に筒抜けで、聖女にも筒抜けだった。
だから牢屋から出される事が無いのだと、ようやく気付いた時には弟と聖女様が婚姻した、と知った時だった。
(どうして…どうして俺では無いのだ?!
聖女様を召喚して迎え出たのは俺なの・・・に…)
そこでハタ…と気づいたのだ。
「迎え出て」はいたが、その場に「聖女を置き去り」にしたのは俺だと。
俺は
* * * *
「兄上…」
猛省を決意した俺の元へ、婚礼衣装のままアレンが聖女を伴って来た。
用意して貰った紙に文字をしたため、アレンに見せる。
【何の用だ?聖女様を置き去りにしてしまった事実は今更、
変えようが無いのはアレンも判っている筈だ】
「はい。判っておりますが、
サーヤが兄上と話をしたい、
と言うので連れて来ました」
【今更なにを・・・】
「第一王子様の馬鹿さを再確認して頂こうかと思いまして…」
【何だと!?わたしが馬鹿だと断言し、
さげすむつもりなのか?!】
「そんなつもりは毛頭ありません。
その口を封じたまま生涯を終えて頂きます。
猛省した所で、置き去りにされてしまった屈辱を、
忘れる事は出来ませんから…」
綺麗な微笑みで俺を見る聖女。
あの時に戻れるのなら、俺に右ストレートをカマすのに、とした唇を噛み、過去の自分を悔いる事しか出来ない現状を受け入れ、生活の自由だけは戻してくれる事となり、弟と聖女様は新しい王と王妃となり、市民から祝福を受けグラシオールの発展に尽力して行く事となるのだと、痛感した日となった
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