閑話~魔法省の失態
これは王城にて召喚魔法が発動する前の事。
* * * *
300年に1度の召喚を行うと聞かされた私ジョニーは、図書館へと赴き、過去の文献を片っ端から読む事から始めなければならなかった。
何しろ、部署には召喚の魔法陣を構築する為の資料は一切、残されていないのだ。
「こう言う役割を請け負うと判ってはいたが、
いざ・・・となると文献が少ないから探すのも大変ですね」
補佐をしてくれる1個下の彼も、溜息しか出て来ない。
「仕方ないさ。我々が担わなければ異世界にいるであろう、
聖女様を召喚し、厄災を防いで頂かねば、
世界が崩壊してしまう、と言われているからな」
「そうは言っても、
わずかな資料から探し出し、
数日後には召喚しなければならないんでしょう?
難しすぎますよ」
いくら魔法を極めていようとも、未知の領域に手を出さなければならないプレッシャーは計り知れない。
それでも世界を救うであろう聖女様を我が国、我が城へと召喚しなくてはならないのだから、責任は重大なのだ…が…。
* * * *
図書館へ到着し、300年前の記録が保管されている区域を教えて貰ったのだが、余りに少ない情報に目が点になってしまう。
「あの…ジョニーさん、
たった…これだけで、
召喚の魔法陣を構築しろとか言いませんよ…ね?」
部下の言いたい事は、見れば判る程に少ない1冊。
その中に一文だけが記載されている状態。
【魔法を司る長により、
召喚の魔法陣は構築され、
異世界から姫君が降臨なさり、
我らが住む世界を救って下さる結果となった】
「詠唱の文言も何も記載が無いなど…
記入しなかった…と言う事だろうか」
「・・・…みたいです。
数枚程、流し読みしてみましたが、
何処にも詠唱どころか、魔法陣の図柄すらありません」
一体、どうやって魔法陣を構築すれば良いのだろう。
詠唱の文言すら残っていないとは、思いもしなかった。
「物を移動する魔法陣の詠唱は残されているよな?」
「品物の移動…そこから人物の移動の詠唱と、
異世界への入り口を結ぶ詠唱・・・
更には女性を限定する詠唱・・・は無理そうですね」
様々な詠唱を組み合わせて作るしか方法は残されていなかった。
だからこそ、実験場所は必要不可欠となり、部署の一角に練習場所を用意した。
* * * *
召喚当日、いよいよ、実験結果を試す時となったのだが、実際の所、確実に構築できていなかった。
ざっくりとした詠唱しか作り出す事が出来なかった。
「ジョニーさん…このまま、
本当に聖女様を召喚できるのでしょうか?」
「判らん…。
判らんが召喚しなければ魔法省から追い出され、
罪人として処罰対象となりかねない」
王命に逆らえないからこそ、未完成の魔法陣を描き、聖女様が来て下さる事を願った。
そして、召喚の間とされて居る空間には宰相様、第一王子様が聖女様を迎えるべく、待機なさっておられた。
覚悟を決めなければならない時となり
「では、召喚の魔法陣を展開し、聖女様を召喚して下さい」
と言われ、ごくり…と唾を飲み込み、様々な文言を追加した魔法陣を描くべく、詠唱を始め最後の一言を宣言するとカッ…!と魔法陣が輝き成功した事を教えてくれる。
私はホッと胸を撫でおろし、その場を離れたのだが、実際は、聖女様と関係の無い男性を一緒に召喚た事に後々、気づく事となり、品物転移魔法陣で異世界へと男性に戻られてしまう事となろうとは思いもしなかった
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