届いた手紙

 * * * *


 翌日、聖女から村に届いた、と言う理由をつけてサクヤは、長老に自分がしたためた手紙を預け、アレンに渡して貰えるよう手配した。


 「長老、手紙の件…宜しく頼みます」


「お前さんも苦労して来たからの、

 少しは報われねばならんが…」


「・・・あの時に戻れたとしても、

 同じ事が繰り返されるので有れば報いなど…

 有り得ないかも知れません」


「サー…サクヤ・・・」


 サーヤと言おうとして止めてくれたかな?有難いが、その名に戻れるのか否かは、王子の判断にゆだねるってトコだが…果たして明日、来るのだろうか。


 サクヤとしては不安で仕方なかった。


 何しろ、召喚された瞬間、第一王子エヴァンに無視され、誰も手助けしなかっただけでなく、王城を後にした自分に対して王様が「指名手配」をして性別を偽らざるを得なくなった。


 それがサクヤの心を壊す原因となってしまう。


(さて、移住者の生活も安定して来たから自分は悠々自適に仕事するか)


 村の入り口に病院が作られ、サクヤは責任者に抜擢されてしまっていた。が、最近は騎士団が討伐に赴く事も無いので重傷者は発生しない。


 病院として機能はしておらず、日帰りの怪我人が時折、来るくらいである。


 だからこそ王子との対面を午前中に指定できたのだ。



 * * * *


 手紙を託された長老は、王子が暮らす一角へと訪れていた。


 そして質素な造りの家屋の扉をノックし、中から不思議そうな顔つきでアレンが出て来たのだ。


「長老殿?!もしや大きな獣でも出たのだろうか?」


「・・・いえ…聖女様からだと思われる書状が届きましたので…

 アレン様へお持ちした次第で…」


「え?!聖女様からの…書状…」


 アレンが手元を見ると、そこには真っ白な封筒があった。


「こちらがサクヤが預かった書状になります」


「サクヤ・・・?」


「ええ。は、

 村の入り口で治療を担っているだけでなく、

 あらゆる情報を集めて貰っております故。

 聖女様から連絡が来るとすれば、

 真っ先にサクヤへと届けられるかと…」


「そう言う事だったか。では手紙を拝見しよう」


 長老はアレンに手紙を渡すと、返事を聞かずに自宅へと戻って行き、アレンは返事は良いのだろうか?とおもいつつも、室内で開封し中身を読み込んで行く。



 * * * *

 内容を確認して苦い顔つきになるのは、仕方ない事でもあった。


 何分なにぶんにも、自分の兄や親が聖女をかろんじた結果、聖女が心を傷つけてしまったと知ったからでもあった。


 護衛を伴わず旧グラシオール王城へ向かう決意をし、面会日に備える事となったのだ

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