最終章
閑話~黒田が消えた教室
「先生、みんな!俺から離れて!
これ絶対に異世界召喚だからっ!近づくと危・・・」
そう黒田が言葉を言った瞬間、教室内は目を開けられない程の閃光が走り、何も見えなくなってしまい、光が収まった教室から奴の姿は綺麗に消えていた。
「え…?黒・・・田・・・?!
う、嘘だろ!?黒田が消えたぁ?!」
目の前で起きた出来事が、信じられなかった。
俺は教師でありながら、異世界トリップ物を投稿するが下位に甘んじているので、最近は読み手と化してるのだが…今まさに、その出来事が目の前で展開され茫然自失となってしまっていたのだ。
「先生?藤田先生!」
「あ、ああ。
黒田が…召喚されてしま・・・ええっ!?」
教室に残っていた彼の同級生たちと俺には、異世界に行ってしまった黒田が誰かに連れて行かれ、隣にいた女性が誰からも助けられる事なく、残されてしまった光景を映像として見ている状態だった。
途中で映像は途切れてしまうのだが、全員が唖然としている。
「今のは一体・・・」
生徒の1人がようやく口にした言葉だった。
それに対して答える形で俺は、異世界トリップを書いているからこそ予測を立てる事にしたのだ。
勿論、無料投稿とは言え副業は禁止。
有名作家では無い事をこの時ばかりは良かったと、胸を撫で下ろした。
「予測しか出来ないが、
恐らくは異世界に何かを行わせる為に召喚されて行き、
謁見の間へと黒田が連れて行かれた光景が、
魔法陣の残像で見えた…と言う事かも知れない」
「そ、そんな異世界召喚なんて小説の中だけじゃ・・・」
「俺だって信じられない。
だが、目の前で実際に起きた出来事を
『そう捉える以外』何と説明すればいいんだ?!」
シーン…と静まり返った室内に残されたのは、黒田の鞄と直前に着替えた制服…。
申し訳ない気持ちに苛まれて誰もが言葉にならなかった。
「…異世界召喚って…物語の定番として戻って来れない…よな?」
「勇者召喚、巫女召喚、聖女召喚…
あらゆる分野が小説には描かれているが、
戻って来れるのは…ごく一部だな。
召喚されてしまった者は戻って来れないのが定石…
黒田も『戻っては来れない』だろう」
「そんな・・・」
「あいつ…レンタルのメイド衣装のまま・・・」
「「「「あ」」」」
レンタル会社に何と説明すれば良いか、判らなかった。
が、その懸念は次の瞬間、消え去ってしまった。
「なーに暗い顔してんだ?」
黒田が何食わぬ顔で教室の後方に立っていたのだ。
「「「「はぁ!?黒田ぁ?!
お前…召喚されて行ったんじゃ・・・」」」」
「うん。行ったけど
『聖女召喚』に巻き込んだって理由では、
戻れないって言われたけど、
品物を戻す魔法陣が作れるって言うんで嘘ついて、
その魔法陣に飛び込む事が出来たんだ」
「…てっきり冒険者にでもなってるのかと…」
「んな訳ないだろ。
あの国は今頃自滅してる。
聖女を置き去りにしたツケは返されてるさ」
そう彼は召喚され謁見の間でウィッグを床に叩きつけたものの、レンタルだと言う事を思い出し拾い、その場から姿を消し、帰れるなら戻りたいと願い出る為、魔法陣を描いたで有ろう人物を探し出し、戻せと言ったが戻る魔法陣は作れないと言われ、ならばと機転を利かせ今に至るのだ。
レンタルして居た衣装の返却理由を考えなくて良くなった、と胸を撫で下ろす一方で、聖女として召喚されたオッドアイの持ち主は、日本に戻って来る事は不可能なのだろうな、と俺は思ったのだ
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