断罪

 メリーの居場所は…村から離れた誰も寄り付かない場所を選び、男爵が追い詰め強引に…か。


 立場では聖女が王族に匹敵すると言われているらしいから、聖女の友人に手を出すと言う事は断罪すべき事案に相当するな。


 困り果てたメリーは、背後に湖が迫り追い詰められた状態。


 下心みえみえな男爵は口を尖らせてメリーの顔に近寄って行く様が視線の先に見えた。


「メリー!」


「サ、サクヤっ…」


 ギリギリ間に合って良かった。


「何だ?」


 あからさまに睨みつけられたサクヤだが、それにひるむ事は100%無い。


 何故なら、元騎士だと言い張っているからであり、最強クラスの魔物討伐すらしてしまった事は、村では周知の沙汰ではあるのだが、この男爵は綺麗に抜け落ちているようだった。


「何処の誰だかしらんが、

 に手を出すんじゃねぇ」


(すっ…と湖を背にしていたメリーを引き寄せて、

 背中に隠しておくか。

 この馬鹿は手刀で昏倒させる事も、

 念頭に置かないと…)


「はっ?!その娘は恋人はおろか、

 婚約者すらおらぬ平民では無いか!

 私のように爵位を持つ男が、

 貰ってやろうと言ってるんだ。

 その娘を渡せ!」


 こいつ…馬鹿か?爵位が有ろうがなかろうが、本人や家族の意思なくして婚姻は結べんぞ?政略結婚は別だろうが…。


 それすら知らんとは、情けないねぇ。


「お言葉ですが、グラシオールでは例え男爵様であっても、

 本人と家族の意思を蔑ろにした状態での婚姻は、

 認められておりません。

 何より彼女はですよ?

 勝手に男爵家に連れて行かれては困るのです」


「貴様っ!何様のつもりだ?!爵位も持たぬ男がっ!」


 サクヤはフッ…と笑みを漏らした。


 視線の先にはアレン王子が、怒り心頭の面持おももちで、近づいているのが見えたからだった。


「・・・騎士ですよ。

 アレン様とも共闘した猛者で、

 この村を守った男でもあります。

 何より身分を笠にして強引に、

 メリーの唇を奪おうとなさっていた事は、

 許される行為ではありません…ですよね、

 アレン王子?」


「え・・・」


 あ~あ・・・顔が真っ青になっちゃった~。


 王子様の前でも同じ事、言う勇気すら持って無いでしょうから、断罪はこれからよね。


「サクヤの言う通りだ。

 例え男爵であってもメリー嬢の両親に、

 婚姻の申し込みを終えているのでしょうか?」


「そ、そ、それっ…それはっ」


 アタフタしちゃってるけど、その態度で取ってません!って言ってるのと同じなのよねぇ。


「取っ手おらぬのだな!?

 そなたは男爵の身分をはく奪し、

 隣国へと追放処分と致す!

 危険な隣国へ今から向かわれよ!」


 うっわ~。


 容赦ないなぁ…。まあ、それくらいの事をしでかしてるもんねぇ。


「メリー、大丈夫?」


「え、ええ。サクヤが止めてくれたから

 (でもサーヤと恋人だなんて偽って、大丈夫なの?)」


 メリーとは、念話で会話を交わす事が出来るようになっていたのよねぇ。


 精霊たちが気を利かせて、会話できるようにしてくれたものね。


「良かった

 (まあ断罪までよ。流石に王子様は疑いはしないでしょ)」


「しかし、良く気付いたなサクヤ。

 私が早く気付いていれば、

 彼女が追い詰められる事は無かっただろうに…」


「その辺は偶然としか言えませんよ。

 最近、眠りが浅く、

 近くの木で休んでいたから早く行動できただけです」


(まさかサーヤ、召喚の瞬間が繰り返されるの?!)


『その…まさかよ。

 仕方ないわ・・・こればかりは魔法で何とか出来る訳では無いし』


 諦めていた記憶の消去…それが叶うのは近日中になると、この時は気づけなかった

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