名も無き村、と言うのを改名してみました

 助け出した夫婦は、イアンと言う農夫とエミーと言う専業主婦の二人で、彼らが住む村の名が『名も無き村』と呼ばれ廃れて行く一方だと聞かされ頭が痛くなったのは内緒。


「助けてくれて有難いが…聖女様の名を聞いておらんな」


「ええ。瞳の色で聖女様と言うのは判ったのだけれど、

 名前を教えて貰えるかしら?」


「さえ・・・サーヤと申します

 (確かステータスに元の名と一緒に、

  サーヤって有ったよね?

  それ名乗れって事だよね~タブン)」


「ではサーヤ、

 私たちの娘として、

 村で過ごすつもりは無いかな?」


「えっ!?迷惑では無いのですか?!

 見た目の恰好は、冒険者の様に見えますが、

 元を正すと異世界の娘…。

 しかも瞳の色は嫌われ…

 「この国でオッドアイを嫌う馬鹿は居ません」え…?」


「シオール王城の第一王子エヴァン・グラシオール様は

 『お花畑』な頭だと、

 もっぱらの噂でして、

 頭脳の良さならば、

 第二王子アレン・グラシオール様が上だと言われております」


 あらぁ~。


 事実は小説より奇なり…って事かしら?まさか異世界に召喚されて「お花畑」王子に出逢う事になるとはね。


 人生、判らないわ。


「あの王子様には恨みしか有りません!

 王城や王家に災いが来たって知らないわよ。

 が正直な感想です、

 そして図々しい願い事ですが、

 私が娘になっても大丈夫ですか?」


「勿論だとも。

 名も無き村に聖女様が来て下さった、と知れば、

 村が活気に満ち溢れる可能性も出て来る。

 だが、農地や水資源は…」


「そこは改良次第で戻す事も可能だと思いますよ?」


「荒れ果てた農地、

 枯れた井戸が戻ると言うのですか?!」


 まあ、そこは驚くよねー。日本の知識を流用すれば戻せるとは思う。


 道具とか人員とか必要な物が揃わなければ無駄な努力に終わるカモだけど、やらないよりは、やって駄目だったの方が後味イイわよね?と自分に言い聞かせちゃう。


「実際に土などを見なければ判りません。

 ですがヤレる事をヤって良いか否か見るのも有りだと思います。

 どうせシオール王都の衰退は決定的でしょう?」


「ぷっ…あははは!

 違いない!!馬鹿王子の所為せいで破滅に近づいて居ると何時、

 気づくだろうな?」


 ああ、うん。


 王様は気づくの早いでしょうけど、馬鹿王子が納得しなきゃ動けないっしょ。


 動いた時には「時すでに遅し」ですけどね~。


 第一、私が居ないんじゃ災害は防げないんでしょう?ざまぁ!


「気付いたとしても、

 王様は第一王子様の馬鹿さに頭を抱え、

 動けるまでに時間を費やし、

 私を探しに出た瞬間から破滅へと向かう事になりそうですね」


「確かにな~。

 賢王と呼ばれる現王様は、

 第一王子の阿呆さ加減に目を点になさるで有ろうしな、

 騎士団で探しに出向かわせたとしても、

 手遅れ…の可能性すら有るなぁ~」


「イアンさん…」


「これからは父と母として接してくれ。

 聖女様の養父母となれるなど、

 これほど幸福な事は無いからな」


 こうして私はサーヤとして「名も無き村」へと向かう事になるのだけども。


「流石に『名も無き村』では村が可哀そうだから…

 そうね…聖なる村…何てどうかしら?」


 村の名前を変更したい、と願い出てみました~。


「お、恐れ多いとは思うが…

 聖女様が暮らす村となるのだ、

 それくらい許して頂けるだろう」


 聖なる村での生活を始める事にした私。


 私が知らずに第二王子を助ける事になろうとは、その時、思いもして居なかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る