魔物襲撃
数か月後、ようやく人の流れや生活が落ち着きを取り戻し、活気に満ち溢れた村へと変貌を遂げ、第一騎士団の面々は、王都に人がいない事や王家の処遇は龍王様が担う事になったと理解し、聖なる村の警護を始めたいと望んでいるようだった。
「サクヤちょっと良いか?」
「アレン王子?
どうなされましたか・・・」
「実を言うと我ら騎士団は、
仕事が無くなったから村の警備や警護を担いたい、
と望む隊員が多くなって来たんだ。
私の一存ではあるが、
この村を新たな王都に据えようかと思っているのだが、
そう言う事を申し出るには、
誰に言えば良いか判らなくてな…」
凄い事になって来たのね。
王城がある王都を捨て新たに聖なる村を王都にしたい、って事か。
確かに人の流れもあって、商人もいても住民は安心して暮らしてる訳では無い。
だったら提案してみましょ。
「それなら長老に交渉して見られたらどうでしょうか?
来るのに苦労する村でしたが、
今や人が集まり商売をし暮らし活気を取り戻した村となりました。
長老とて王子様から打診されれば否とは言えないと思われます」
「長老…と言う事はレイモンドの自宅か?」
「ええ、そうなります。
騎士団詰め所を新たに作らなければなりませんね。
場所を確保しましょう」
「サクヤ…お前…本当に何者なんだ?」
「何者って言われましても…元は一介の騎士でしたが、
目に傷を負い体にも多くの傷を負ってしまい、
戦争に出る事が出来なくなってしまった青年…
と言うだけで御座いますよ」
(色々な事をヤリすぎたかしら?)
「そう、か」
「王都にするなら王城も作りますか?
流石に大きな城は難しいでしょうけど、
アレン様が暮らす屋敷なら作れると思いますが・・・
その辺は大工と相談ですね」
ケラケラと笑いながら詰め所の場所を探す為に森へと消えたサクヤ…疑いの目を向けてはいるものの、決定打を見い出せないアレンはジレンマを抱えていた。
(本当に一体彼は何者なのだ?
対戦した事が有れば剣技に特徴を持っている筈なのだが、
彼にそれは見当たらない。
なのに所作は騎士そのもの。
本当に一線を退いた騎士なのだろうか。
疑えば疑う程、
彼が騎士だと知らしめるだけとなるのが不思議だが…)
サクヤはアレンから離れ森の開拓現場へと向かい始めていた、そこへ
「大変だ!魔物の大群が村に向かって押し寄せている!!」
との伝達が回って来たのだ。
「第一騎士団の中で動ける人材に声を掛けてくれ!
俺は剣を取りに戻る!」
(こんな時に限って手入れの為に剣を出してんのよ私はっ!)
「判った!守りを担ってくれた騎士たちが、
真っ先に向かってはくれてるが、多勢に無勢状態なんだ!」
「くそっ!」
魔物除けに張った筈の結界が破られたの?!
結構、強力なのを掛けたつもりだったんだ…け…まさか…!?
誰かが結界だと知らずに破ってしまった?!それなら合点が行く!
俊足…とまで行かないものの、大急ぎで自宅に戻り剣を腰に差し王都では無く森に近い入口へ向かうと、Sクラスの魔物を先頭にしてSSクラスの魔物が鎮座している様が飛び込んで来た。
「マジか…くそ!
ここは俺に任せて皆は女性たちを、
王都側に作った避難場所に向かわせてくれ!」
「すまん!頼んだぞ!!」
女性や子供、年配の方々を避難させるには1人では難しいものね。
今できる最善の方法を取らないと、せっかく集った人々が別の地に向かい聖なる村は昔に戻ってしまう、それだけは避けてみせるわ!
1頭…2頭とAクラスのウルフを倒し、Sクラスの魔物オークキングを倒して行く様は、元騎士で有ると雄弁に語っていたが、サクヤは独眼…昔騎士だった感覚で倒した、と言われても疑う事はないくらいの活躍ぶりだった。
「サクヤ!」
そんなサクヤに助っ人が駆けつけた。
「アレン様?!動ける騎士を連れて来てくれたんですか。
助かります!」
こうして襲い掛かって来た魔物の大群は、9割近くサクヤが倒し、残り1割を騎士団が倒し村を守り切る事が出来たのだ。
そして1か月後には聖なる村が、王都と呼ばれる程、発展してしまうのだった
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