手配されたのでサクヤと名乗ります

 夕方には旧「名も無き村」に到着したけれど、すたれっぷりが酷いわねえ…。


「これは酷いわね」


 朽ちてしまった家屋、作物が育たなくなった田畑、枯れてしまった井戸…見える範囲だけでも苦しい村の現状が判るわね。


 さて元凶は、鑑定を掛ければ判るかしら?


---------------------------

  聖なる村(旧:名も無き村)


 呪いが掛けられてしまった不幸な村。


 呪いを解く事が可能なのは聖女のみ

 

 解かれた呪いは二度と掛かる事は無く作物は育ち


 井戸は水を潤し生活を支える基盤となる

--------------------------ー


「・・・なるほどね・・・」


(これは呪い・・・では無くヘドロさえのぞけば、活気を戻す事も可能って事ね。ちゃっちゃと終わらせて村の笑顔を取り戻しますか!)とは言え、王城に近い村の入り口が何だか騒がしいわね。


「た、た、大変だ!

 聖女様を王様が手配し、

 見つけた者に100万エンダー、

 保護した者には200万エンダーだと言うお達しが・・・!」


 手配の内容をいち早く知った村人が、手配書が届く前に聖女を守る為にも通達しに走ってくれたって所か。


 人の事スルーしておきながら犯罪者でも無い私を手配?!完璧に許さん!!


「イアンさん、この村は男女関係なく、

 大人となれば家を持てるのでしょうか?」


「い、いや・・・それは無い。

 だが聖女様を住まわせるとなると、

 家を与え仕事に従事して頂く形を取るよう言われておる」


「なるほどね。部屋を貸して貰えますか?」


「サ、サーヤ?」


「聖女で有る私が、

 この村に身を隠して居ると知られれば、

 聖女を独占したなどと難癖をつけられ、

 村自体が潰されてしまう可能性が有ります。

 なので私は独眼となり男性を装い切り抜けようと思います」


「ぷっ…ぷぷ…なんとも勇ましいな。

 判った部屋を貸そう、

 独眼となるのならば隠すアイテムが居るだろう?」


「ええ」


「着替えて居る間に用意しよう」


 結構、手配を掛けるのが早かったわね。


 あぁ、あの宰相様が王様に報告してたってトコか…なら納得だわ。


 脳内お花畑な王子を謹慎にでもすれば、行動を起こすのは容易いでしょうしね。


 こんな時、貧相な体型が役立つ事になるとは思わなかったな。


 髪型はロングでは有るものの騎士様を見た時に長髪でも大丈夫そうだって気付いたし、体型はボン!キュ♪ボン!じゃなくて男性っぽいストンとした体形だもんね。


 スカート履いたら女装したの?って言われるのがオチだったし…いかんいかん、着替えて別の名前も用意しなきゃ。


 男装した私は、イアンさんが用意してくれた部屋から外に出ると、真っ先に声を掛けてくれたのがエミーさんだった。


「サ、サーヤなの?」


「ええ。その名も封印しなければなりませんね。

 今日から手配が消える事は無いでしょうから、

 あの国が亡びるか王様が手配では無く、

 謝罪したいとの旨を通達しなければ、

 男性と偽る事としますので、

 今日からはサクヤと呼んで下さい」


 目を負傷してしまい、騎士として役立つ事が困難になってしまった青年が、出身の村に戻って来た…と言ったとしても誰も疑わないで有ろう姿にエミーは驚いて居た。


 それもその筈、サーヤは騎士が王や王子に向けて臣下の礼を尽くすかの如く右手を胸に宛て腰を折ったのだ。


「何だか…その姿だと女性の心を掴んでしまいそうだわ」


「あははは。それは困りますね。

 王都からの手配を逃れる為の男装です。

 見つかるまで探し続けるでしょうから、

 このまま村の治療師で危険から女性を守るのも厭わぬ猛者…

 とでも言っておきますか」


 まあ設定条件としては曖昧すぎるかもだけど、緊急事態を回避するには妥当かしら。


 王都からの手配書が村に届くのは・・・早かった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る