第16節 初信州!
というわけで家から新宿駅に向かい、中央線特急に乗ること約3時間ほど、到着いたしました。信州松本!
今日は今年昇格してきた松本との対戦だった。
「ん~着いたぁ~」
ホームへ降りると、体をほぐすように美帆が伸びをしていた。
空はどんよりとした曇り空で、今にも雨が降りそうな梅雨空であった。だが、都内とは違い、空気がすんでいる感じがした。
「行こうか」
「うん!」
美帆の手を引いて、スタジアムへ向かうシャトルバス乗り場へと向かった。
シャトルバス乗り場は、多くのスタジアムへ向かうサポーターで混雑していたが、何とかバスに乗り込んでスタジアムへと向かう。
バスに乗ること約30分ほど、ようやくスタジアムに到着する。
スタジアムに到着して、ポツポツと雨が降ってきた。傘を差しながら待機列へと向かった。
しばらく待機列で待った後、入場口でチケットを切ってもらい、コンコースからスタジアムの中へと入った。
スタジアムは、コンパクトかつ、とても見やすい雰囲気のスタジアムになっていた。
「へぇ~こんな感じなんだね」
「ね、初めて来たけど、結構いいスタジアムかも」
二人で感心しながら席を確保して、雨で荷物が濡れないようにビニール袋に貴重品以外の荷物を入れて縛った。
相手側は、多くの緑色のサポーターで埋め尽くされていた。
「すごい迫力だね」
「そうだな…こっちも負けないように頑張らないとな」
「そうだね…」
すると、GKがピッチに入ってきた。ウォーミングアップが始まった。
今日は、先週退場した選手がいたため、美帆の好きな10番の選手がトップ下にはいていた。今シーズンはまだ得点がないため、是非得点を決めて欲しいものである。
ウォーミングアップ中も、選手は集中した面持ちで真剣な表情をしていた。
少し表情が硬い選手もいたが、試合になれば緊張も解けるだろう。
そして、ウォーミングアップ中もずっと応援し続けた俺たちは、すでに喉がイガイガとしてしまっていた。
「はぁ…今日はなんだが、応援の熱がすごいね」
ようやくアップが終わり、選手入場までの休憩時間となった。
美帆は、だらーんと席に座り込んでゴクゴクと水を飲んでいた。
「まあ、相手のサポーターが熱いからね、こっちも頑張らないとって感じなんじゃない?」
「ぷはぁ・・・なるほどね~」
美帆は、ペットボトルのキャップを閉めて、立ち上がり、自分が今座っていた場所にペットボトルを放り投げた。
「よっしゃ!応援頑張りますか!」
「おう!」
そうして再び気合を入れ直して、選手入場までの時間を待ったのだった。
選手が入場してきた。雨はやみ、曇り空の中少し肌寒い中での試合になりそうだった。
選手たちが自陣で円陣を組み終えて、各ポジションへと散らばっていく、ボールを相手選手がセンターサークルでセットし、審判が時計を確認する。
ピィ!っという笛の音とともに、試合が始まった。
◇
試合は序盤からこちらがボールを支配しつつ、相手はロングボールを蹴ってきて長身のFWにボールを預ける戦法でやってきた。
そんな中で徐々にチャンスをこちらが作っていく。
中央で細かいタッチでボールを回して相手を翻弄すると、美帆のお気に入りの10番の選手が意表を突くサイドへのパス。
ポッカリと空いたスペースに走り込んだノーマークの選手がニアにシュートを蹴り込むものの、相手GKにセーブされ、ゴールとはならない。
さらに前半20分頃。ペナルティーエリア手前中央やや右でFKを獲得する。
キッカーは、美帆のお気に入りの10番の選手。見事な軌道で虹を描くように放たれたシュートは、一直線にキーパーが届かない位置に向かっていく。
しかし、「カン!」と無情にもポストを叩く音が聞こえ、ゴールならず。
前半終了間際には、相手が上げたセンタリングを味方DFとGKで交錯し、相手選手が無人のゴールへ慌ててシュートを放つ。
だが、これも「カン!」というポストの音が鳴りボールはゴールラインを割っていった。
お互いにチャンスを決めきれぬまま、前半を終了した。
後半は、相手がガッチリと陣内で守る体制に入ったため、中々シュートチャンスが訪れない静かな試合展開が続く。
そんな中、ベンチが動く。途中出場の7番の選手をピッチに送り出した。
7番の選手の献身的な動きが功を奏したのかは分からないが、徐々に相手チームに疲労の色が見え始める。
そして、その時は訪れた。後半35分、左サイドでスルーパスに反応した7番の選手が、相手DFと体をぶつけ合いながら粘り、何とかゴール前へグラウンダーのクロスを送る。
すると、中で待っていたFWの選手にパスが繋がる。相手DFを背中で抑えながらクルッと反転してのシュートを放つ!
これが見事にネットに突き刺さり、ようやく試合の均衡を破り、先制に成功した。
その後は、時間をしっかり使いつつ、相手にほとんどチャンスを作らせないようにして、タイムアップ。1-0と難しい試合となったが、何とか勝ち点3を獲得して暫定2位に躍り出たのであった。
◇
試合終了後、サッカー渋滞に巻き込まれ、駅に到着するまでにかなりの時間を要してしまった。今日はホテルに宿泊する予定だったので、電車の時間は気にすることはなかったのだが、バスの中でもずっと立ちっぱなしだったので、疲れてしまった。
宿泊予定のホテルにようやく到着し、チェックインを済ませ、エレベーターに乗って、目的の部屋へと到着した。
「ふぅ~やっとついたぁぁぁぁ」
美帆は疲れ果ててしまったようで、荷物を放り投げて、自分もそのままベッドに横たわってしまった。
「お疲れさん」
俺は部屋の明かりをつけ、荷物置き場を確保してからトイレやシャワールームの中を確認する。
「達也~お風呂~」
「はいはい、先に入っていいから、今日はもう寝ろ」
「え~ん、一緒に入ろうよ~~!!体洗って~」
「んなこと言われても、狭いし」
「チェ…ケチ」
そのままご機嫌ななめな美帆は、シャワールームへと姿を消していってしまった。
まあ、シャワーを浴びてスッキリすれば、すぐにでも機嫌は直るだろう。
俺はもう一方のベットに腰かけて、テレビのリモコンの電源ボタンをポチっと押した。テレビではちょうどニュースのスポーツコーナーをやっており、先ほど行われた試合のハイライトが流れるところであった。
俺はそのハイライトを見ながら、にこにことした笑みを浮かべて、美帆がシャワーから出るまでの間そのニュース番組を楽しんで見のだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。