カップ戦 第6節 終わった

 今日は本当についていなかった。

 集中力が欠如していたのか、珍しく仕事でミスをしてしまった。

 もちろんすぐに上司に謝りにいったのだが、それからが最悪だった。


 上司は、ここぞとばかりに俺を罵りまくってきた。

 いつも仕事をちゃんとこなしていても、一度も褒めてくれたことがないくせに、1つでもミスすればこれだよ全く…


 結局小一時間説教を食らって、神経を使い果たして心身ともに疲れ切ってしまった。

 がっくりと肩を落として、デスクに戻る。


「大丈夫?」

「どんまい」


 などと、周りの仲間が声を掛けてくれたが、それ以上に俺の心は痛み切ってしまった。


 どうして、人を褒めることをせず、批判ばかりしてくるのだろうか??

 批判することでしか欲求を得ることが出来ないのだろうか??

 いつも自分は仕事をせずにヘラヘラと煙草を吸いに行って、30分近くも休んでるくせに…ホント社会って無情である。

 もう、本当に嫌だ…



 俺は気落ちしつつ、作業を続けたのだった。



 ついていない日というのは、悪いことが1回でも起こると、2回、3回と起こってしまうのが、世の定理だ。


 上司に叱られた後、全く仕事に精が出なかったので、やらなければならないことが、全く終わらずに、気が付いたら就業時間になっていた。


「お疲れ様です」


 とあちこちから聞こえてくる中で、俺は残業して仕事を終わらせなければならない。


 もちろん、先ほど俺を罵りまくった上司は、定時にきっかりと上がっていった。

 しかも、15分前くらいからまた煙草吸いに行ったし…

 クソが・・・いつか重大なミスを犯して、奈落の底まで落ちてしまえ


 俺はそんなことを心の中で思いつつ、仕事を続けた。



 時刻はあっという間に、19時。

 俺はPCとにらめっこをしながらイライラいつつ仕事をしていた。

 はぁ…こりゃ、今日は試合見に行けそうにないなぁ…


 今日はホームでカップ戦の最終節が行われているのだが、残念ながら残業のせいで行くことが出来ないようだ。


 俺はスマホを取りだして、席を確保しておいてくれていた美帆にメッセージを送った。


『ごめん、仕事長引いて、今日は行けそうにないや』


 すると、すぐに既読が付き。


『そっか、わかった。お仕事頑張ってね』


 と返信が来たので、


『ありがとう』


 と送り、再び仕事に取り掛かろうとした時だった。

 手に持ったボールペンがバキッっと音を立てて折れてしまった。


「・・・」


 俺はその折れたボールペンを見ながら、思わずため息をついてしまう…



「はぁ…」


 美帆からもらったボールペンだったのに…


 悲しさと不吉な予感を感じさせながら、新しいボールペンを取りだして、作業に取り掛かるのだった。



 ◇



「んん~!!はぁ~」


 ようやく仕事が終わり、チラっと時計を見た。


 時刻は夜の10時30分を回っていた。

 ってどこのブラック企業だよ…


 デスクには俺以外誰もいなかった。


「よおし、結果でも見るか…」


 俺はスマホを取りだして、今日の試合の結果を見た。


 試合終了

 1--3


 表示されていたのは、無情にも敗戦という内容だった。


 しかも相手は一つカテゴリーが下の2部チームだった。


 俺はまさかの結果に思わず動画投稿サイトでハイライトを探した。


 ハイライトを見ると、内容は散々なものだった。

 1得点は素晴らしいフリーキックだったものの、3失点すべてがリスタートからの失点というプロとして信じられない失点だった。


 完全に集中力の欠如・・・はは…まるでどこかの誰かさんと全く一緒だな。


 ハイライトを見終えて、トークアプリを開くと美帆から返信が届いていた。



『リスタートから3失点って…マジでないんだけど…』


 俺と全くの同意見を述べてきた。


『そうだな。ハイライト見たけど、ひどかった』


 そう返事を返してスマホを閉じた。


 はぁ…終わった…


 こうして俺の仕事が終わったのと共に、今シーズンのカップ戦もグループステージ敗退という結果で終わることになったのだった。

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