第7節 三大都市名古屋
朝早く新幹線に乗った俺と美帆は、まだ日が昇り始めた午前9時ごろに名古屋駅へと到着した。
今日はアウェイで名古屋との試合を迎えようとしていた。
俺たちはスタジアムまでスタスタと電車を乗り継いで向かい。試合が行われる競技場へと到着した。
今日はナイトゲームのため、しばらく時間がある。そのため、シートを貼り終えた俺たちは名古屋市内を観光することにした。
◇
まず始めに向かったのは、なんといっても名古屋城!
やはり天守閣の上に見える金鯱は、とても美しくて綺麗であった。
「やっぱり他のお城と違って輝いて見えるね名古屋城は!」
「そうか?俺はこういうのあんまり詳しくないから、なんか凄いっていう感じなしかしないんだが…」
「あんたはもう少し歴史について興味持ったほうがいいわよ。城によって特徴や形、見栄えだけでも全然違うし、その作られた歴史なども知るとよりお城について好きになれるわよ。」
「そういうもんなのかね…」
「全然やる気ない~」
俺の興味が薄いと感じたのかプクっと頬を膨らませて不満そうな表情を浮かべていた。
◇
次に向かったのは、名古屋港水族館。
まあ定番っちゃ定番だが、久々に美帆が水族館に行きたいとのことで行くことにしたのだ。
「ねぇ、見てみて、その魚可愛い~」
水族館に到着してからというもの、美帆はずっと子供のようにはしゃぎっぱなしで水槽にいる魚を一つ一つ見ていた。
「へぇ~この魚って日本固有の種類なんだってさ」
「そうなんだ…なんか地味だな」
「え~そうかな??ほら、この目とかクリってしてて可愛くない??」
美帆が指さしている魚を見ても、ただの白身の魚という感想しかなく。魚口や魚目といったようなものが可愛いとは思えなかった。
やはり、女の子のカワイイは、範囲が広すぎて付いて行けないのである。
そんな美帆に相槌を打ちながら進んでいくと、到着したのはイルカなどのショーが行われるところであった。
「丁度後10分くらいでイルカショーが始まるみたいだね。」
ショーのタイムスケジュールの看板を見ながら時計を確認して美帆に伝えると、
「おぉ、じゃあ、見ていこう!」
とルンルン気分でイルカショーが行われるプールへと向かった。
観客席には既に多くの家族連れの子供たちで溢れかえっていた。
俺たちは真ん中から少し左寄りの後ろの方の席を確保して腰かけた。
ショーまでの時間を待ちわびているように子供たちがまだかまだかと親に駄々をこねていた。
「まだなぁ~」
そして、俺の隣にも子供のように駄々をこねている大人の女性が一人・・・
「そんなに慌てるなって時期に始まるんだから」
「え~だってぇ~」
そんなことを話していると、スピーカーから爽快な音楽が流れだしてプールサイドにお姉さんが現れた。
「皆さん、こんにちは~」
「こんにちは~!!!」
「ちょっと…恥ずかしいからやめて…」
美帆は子供たちと同じように元気な大きい声で挨拶をして見せていた。
俺は恥ずかしくなり、目を逸らしてしまう。
それからというもの、イルカたちのショーは圧巻の一言であった。
ジャンプはもちろんのこと、ひれをヒラヒラと振って挨拶をしたり、鳴き声を鳴らして歌ってみたりと芸達者なイルカたちがお客さんを魅了する。
そして、なんといっても最後の執りを飾ってお披露目になったのが、イルカの大ジャンプ!
思いっきり助走をつけて水面からジャンプをしたイルカは高さ3,4メートルはあるであろうボールに見事鼻先を当てることに成功して今日一番の拍手と歓声が巻き起こった。
30分ほどしてすべてのショーが終わり、拍手でイルカたちは見送られながら元の水槽へと帰って行き。お客さんたちも水族館の園内へと戻り始めた。
「はぁ~楽しかった~」
「お前は少しはしゃぎすぎ。」
「だってこういうところでは楽しんでおかないと!達也も人生楽しみな!」
「アイテ!」
ニコニコとしながら美帆に思いっきり背中を叩かれた。
全くコイツは…少しイラっともしたが、美帆の悪気がない笑顔を見てしまうと。そんな怒りもすぐにどこかへ消えてしまい、気が付けば微笑みを返しているのだった。
◇
無事に競技場に戻ってくると、多くのお客さんが列をなしていた。
俺たちもシートを貼った位置に戻って、入場時間まで時間を持て余した。
開門となり、入場ゲートをくぐり、席を確保した。
今日はナイトゲームなので既に照明の明かりがピッチを照らしており、夕焼け空に幻想的な風景が広がっていた。
一度競技場の外に出た俺たちは、名古屋グルメを満喫することにした。スタジアムの出店を一通り回って、選んだのはやはり味噌カツのお店。
プラスチックの容器にいれられたご飯に味噌カツが乗った丼ぶりは、湯気が立ち込めてとても美味しそうであった。
席に戻った俺たちはその味噌かつ丼に頬張りついた、カツの美味しいサクっとした食感と味噌の甘い味が聞いていてとても美味である。
その後にご飯を掻き込むとより食欲が進んだ。
味噌カツを食べ終わり、しばらくすると、選手たちがようやくウォーミングアップに姿を現した。
◇
「今日も頼むぞ!!」
選手たちがゴール裏のサポーターん挨拶を終えて、アップを始めると、ゴール裏のサポーターたちも答えるように応援歌を歌って選手たちを後押しする。
今日は上位チームとの対決ということもあり、選手たちにとても気合が入っているように感じられた。
アップを終えて、選手紹介が終わり、ようやく選手がユニフォール姿で入場してきた。
お互いに相手選手と審判に握手を交わしてピッチで円陣を組んだ。
今日はこちらボールからのスタートらしい。
審判が時計を確認して、ピーっと笛を拭いて試合が始まった。
◇
試合は開始早々に相手チームにPKを献上してしまい、先制される展開。
その後も相手のハイプレスに手こずり、中々チャンスを作れない。
しかし、前半20分相手の隙を見逃さずに一気にカウンター攻撃をさく裂させると、見事にゴールネットを揺らして同点に追いつく。
前半を終えて、後半は相手陣内へとボールを運ぶ回数が増えたものの、中々決定的なチャンスへと結びつけられない。
そんな中後半終盤は足が止まり、守備が重きになってしまう。
後半終了間際に1対1の絶体絶命のピンチを迎えるが、相手のシュートをGKがファインセーブを見せてなんとかしのぐ。
試合はそのまま終了となり1ー1の引き分けとなった。
◇
試合が終わり、俺たちは駅前のビジネスホテルの一室にようやくたどり着いた。
「ふぅ~一日お疲れ様~」
「お疲れ~」
美帆は荷物を近くの椅子に置くと、そのままベットにダイブしてうつ伏せに寝ころんだ。
「シャワー先浴びる??」
「いい、先入って~」
「わかった。」
俺も荷物を美帆の隣の椅子に置き、中から下着や寝間着などの着替えを取りだして先にシャワーへと向かった。
シャワーに向かうまで美帆はずっと寝っ転がったまま動いていなかった。
◇
「おまたせ~」
俺がシャワーを浴び終えて、部屋に戻ると、美帆はスヤスヤと寝息を立てながら先ほどと同じ体制で眠ってしまっていた。
「美帆~」
「ううん…」
美帆は軽く目を覚まして返事をしたものの、動きそうな気配はなかった。
「はぁ…
俺はため息をついてから美帆の下敷きになっている羽毛毛布を引っ張って美帆をシーツの上に頑張って寝かした。
そして、美帆の下から取り上げた羽毛毛布をそのまま美帆に掛けてやる。
美帆はそのまま顔まで全身を掛けられて、姿が見えなくなった。
しかし、気にした様子もなく。少し布団の中で動いて寝やすいポジションを見つけると、そのまま寝息を再び立てて眠りについてしまった。
「今日は朝からはしゃぎっぱなしだったから仕方ないかな…」
俺は布団の中に埋まってしまった美帆を見ながらそう語りかけて、自分も就寝の準備へと取り掛かるのであった。
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