第8節 デーゲーム
土曜日、午前9時、今日も最寄り駅で彼女を待っていた。
「おーい」
すると、改札口の方から手をヒラヒラと振りながら笑顔で向かってくる彼女の姿があった。
ユニフォームを着こなして、新着して応援チームの帽子を被り、後ろで結んだ髪を揺らしながらこちらに向かってきた。
「おはよう、美帆」
「うん、おはよう達也!」
挨拶を簡単に交わした俺たちは急ぎ足でスタジアムへと向かう。
スタジアムへと向かう途中でコンビニでドリンクを調達してスタジアムに到着した。
今日は北の大地北海道のチームとの対戦のため、イベントスペースでは北海道フェアーと題して北海道のご当地の出店が多く出展していた。
後でイベントスペースには来るとして、そそくさと入場の待機列にならんだ。
今日は何故かいつもよりチケットの売れ行きがよかったとのことで、列は多くの人々でごった返していた。
「今日は一段と人が凄いね」
「そうだねー」
「今日って何か特別なイベント事ってあったっけ?」
「いやぁ?確かなかった気がするけどなぁ…」
そんなことを話していると待機列が動きだし、入場時間になっていた。
俺たちも前の人たちに付いていくように列の間を開けないように歩いていく。
しばらくすると、入場口が見えてきた。
俺たちはチケットをかざして入場ゲートをくぐり、入場者に配られる商品やパンフレットをもらって席の確保へと向かった。
いつもより人が多かったためか少しゴール裏よりも外側の席になってしまったが、ここでも問題なく応援しながら観戦を楽しめるであろう。
「よしっ!どこ行こうか?」
席を取り終えて一段落した俺たちは、パンフレットを見ながら今日の出店のラインナップを見て昼飯を決めていた。
「ここがいいんじゃないかな?」
「ジンギスカン丼…わぁー美味しそう!」
「じゃあ、この屋台にしよう」
俺たちは目星をつけてから出店があるイベントブースへと向かった。
今日はいつも以上に屋台の出展数も多かったため、いつもより人が多かったものの、分散したためいつもと同じくらいの時間で無事にジンギスカン丼を購入することができた。
帰り際にガチャガチャやショップに立ち寄ってから席に戻り、ビニール袋からジンギスカン丼を取り出してふたを開けた。
中には一面にジンギスカンで白米が見えないくらいに埋め尽くされており、湯気が立ち込めてとても美味しそうであった。
「いっただきます!」
「いただきます。」
お互いに手を合わせていただきますの挨拶をしてから割り箸を割り、ジンギスカン丼を頬張った。
ラム肉のしっかりとした噛みごたえに、噛むごとに溢れでるジュワっとした肉汁が白米と混ざり合い、とてもマッチした素晴らしい味と風味が口全体に充満し、鼻まで伝わる。
「んーおいひい!」
モグモグをジンギスカン丼を食べながら、足をパタパタとさせ、幸せそうな表情を美帆が浮かべている。
「ホントに美味しいね。この屋台にして正解だったかもね!」
「うん!」
目を輝かせながら俺の方を見て頷いたかと思えば、再びジンギスカン丼の方へ目を向けてニコニコしながら大きな口を開けてまた一口頬張っていた。
そんなに幸せそうな表情で食べていると、こっちまで幸せな気持ちになってきてしまうのであった。
◇
ジンギスカン丼をペロッと平らげ、ゴミを捨てに行き、お手洗いなどを済ませて自分達の席に戻ると、話は北海道のことになる。
「やっぱり北海道といったら知床とか函館とか行きたいところがいっぱいあるよね!」
「今度のアウェイ行くときどこに行こうか?」
「試合の時間にもよるけど、知床とかだと移動だけで凄い時間かかっちゃうんじゃない?」
「それはそうだけど…でも、やっぱり一度は世界遺産に行っておくべきだと思うんだよね~」
「まあな。」
そんなことを話しているとスタジアムに大きなBGMが鳴り響き、ゴールキーパーがウォーミングアップを始めるため、ピッチに登場してきた。
「お、出てきた!」
「まあ、北海道のことはまた今度決めよう」
「うん!」
そうして話を切り上げて、今はこれから始まる試合に向けて、選手を応援することに集中することにした。
5分ほどして、フィールドプレイヤーもピッチに現れて、ウォーミングアップを本格的に開始する。
すると、ゴール裏の応援団が太鼓を叩いて応援歌を歌い出す。
それに合わせて俺と美帆も大きな声と手拍子で応援に参加する。
各選手一人一人応援歌を歌い終えて、選手がユニフォームに着替えるために一度はロッカーへと戻っていき。
再びスタジアムのBGMが鳴り響き、両チームの選手紹介が始まった。
そこから、試合前の鼓舞する歌を歌い、モチベーションを最高潮にまであげていく。
そして、選手入場の音楽が鳴り、選手が子供たちと手を繋ぎながらピッチへと入場していく。
ゴール裏では応援歌を歌いながら選手達に試合前最後のエールをおくる。
陣地の中央付近で選手達が円陣を組んで気合いをいれる。
サポーター達は拍手で選手を鼓舞して再び試合中の応援歌を歌い始める。
審判が時計を確認してピィーっと笛をならして試合が始まった。
◇
試合は開始早々から集中力をかき、開始10分でまさかの2失点を喫してしまう。
そのあとも盆ミスを繰り返した選手たちは全くいいところがなく、気がついたら0ー3と最悪のスコアで前半を終える。
後半にはいっても連携面が全く会わず、シュートまで全く持っていくことができない。
結局90分間為すすべもなく試合終了。
完敗という結果に終わったのであった。
◇
試合を終えて俺たちは試合の内容に呆れ返ってしまい、疲れが一気に押し寄せてきた。
手を繋ぎながら無言で話すこともなく俺の家へと到着した。
「ただいま~」
「お疲れ様ー」
「ふぅー」
ようやく一言挨拶を適当に流しながら、いつものように美帆がテレビの前にあるソファーにダイブした。
今日はパンストにスカートだったので、風圧でスカートがめくれ上がり、パンストの下からうっすらと白いパンツが見えていた。
「パンツ見えてるぞ」
俺はそういいながらキッチンへと向かう。
「見せてるんじゃなくて、見せてるのー」
すると、美帆がそんなことを口にした。
「…」
俺は無言で美帆の方を見つめながら流しで手を洗う。
なにも反応がなかったのが気に食わなかったのか、じとっとした目で美帆が顔だけ振り向きこちらを見てきた。
「バーカ」
ベェーっと下を出したから思うと、再びそっぽを向いてしまった。
俺は手を洗い終え、はぁーっと一息ため息をついてタオルで手を吹いてから美帆が寝っ転がっているソファーへと向かい、美帆に覆い被さるようにダイブした。
「とりゃ」
「ヴぇぇー」
俺にのし掛かられて悲痛な声を上げたが、すぐに俺が力を弱め、脇腹をくすぐった。
「おりゃっ!」
「…ククッ…ブッ…アハハハ!!ちょっと待ってタンマ!」
俺のくすぐりに限界むかえ、吹き出しながら俺の手の中で美帆は悶絶していた。
「おりゃおりゃおりゃ!」
「ちょ…ホントにやめっ…あぁん…///」
すると、俺の手が、運よく美帆の下腹部に当たってしまい、甘い声を美帆が出したので、俺も思わず手を止めてお互いに見つめ合う形になった。
しばし沈黙が流れたが、美帆が体を縮こませ恥じらいながら、
「エッチ…」
と一言いった。
「ご、ごめん…」
俺が一言謝ると美帆は俺の腕を掴んだ。
「ううん、別にいいよ。」
すっと、顔を俺の方へと近づけてきて、俺たちは軽い口づけを交わす。
「チュ…」
お互いに至近距離で見つめ合いながら俺が一言言い放った。
「ベッド、行こうか。」
「うん。」
こうして、試合の腹いせに、俺と美帆はお互いの愛をさらに深め合うのであった。
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