第27節 まさかの寝坊!?

 ナイターのホームゲームなのに寝坊して遅刻しました。

 違うんすよ。聞いてくださいよ。


 昨日は、仕事が終わった後に美帆の誕生日を祝うために東京のレストランを予約して一緒にディナーを楽しんだわけですよ。

 そこからデートして、ホテルに行って、朝自宅に帰ってそのまま寝ちゃったんですよ。


 そしたら何とびっくり、起きたら16時30分。

 既に列整理の時間終わってたんですね、はい。


 俺と美帆は急いで支度を済ませてスタジアムへと向かっていた。


「はぁ・・・・・・なんでいつもわたし達って詰めが甘いんだろう」


 がっくりと美帆は項垂れていた。


「ま、まあ、試合には間に合うんだし、よかったんじゃない??」


 落ち込む美帆をなだめながら、俺たちはスタジアムへと到着して足を踏み入れた。

 案の定、あまりいい席はとることが出来ず、1階席の端の方の席でタッチラインよりも外側。つまり正面はピッチの外なので首を左側に向けて試合を見なくてはならない。

 だが、右側はベンチがありのでサブの選手や監督はよく見える位置だ。

 まあ、久しぶりにはこんな感じで新たな場所でサッカーを楽しんでみてみるのもいいことなのかな・・・・・・


 そんなことを思いつつ席と確保した直後、すぐに選手たちのウォーミングアップが始まった。


 今日勝利すれば、リーグ戦初の4連勝となる。

 優勝争いをしていくうえで、もう1試合も落とせない中で迎えたきょうの試合。

 3日前の天皇杯を引きずっている選手もいるかもしれないが、ここは是非切り替えて勝利を手にしてほしい所である。


 応援もいつも通りサポーターたちは熱い。だが、いつもよりも端の方なのでこう応援している人たちを俯瞰してみるような感じになって、面白かった。


「へぇ~応援してるときってこんな感じなんだねぇ~」


 美帆も同じことを思っていたらしく、iPhoneで応援の様子を撮影していた。


 ウォーミングアップ、選手紹介も終わり、選手入場の時、緊張な面持ちで選手がピッチに入ってきた。


「よしっ! 今日も気合入れて頑張ろう!」


 そう言って、美帆は右手の拳を突き上げる。

 もう、寝坊のことは切り替えて今の状況を楽しもうと前向きにとらえているようだった。

 円陣を組んで、各ポジションに散ったところで、センターサークルで審判がピィっと笛を鳴らして試合がスタートした。


 ◇



 試合は序盤からこちらがボールを支配していく。

 そんな中迎えた前半中盤。相手のミスから高い位置でボールを奪うと左サイドへと展開。左サイドで売れた選手が、スルーパスを出すと、それに見事に抜け出した選手がペナルティエリア左側からグラウンダーのクロス。

 これに合わせたのは右サイドバックの選手!!

 見事ゴールネットを突き刺して、幸先よく先制に成功する。


 しかし、そこから試合は相手チームのペースに変わる。決定的なピンチを2、3度招いてしまうが、何とかDFが踏ん張り無失点で抑えて前半を終えた。



 後半は、また序盤は固い試合展開を迎えるものの、中盤からはこちらがペースを握って何度もチャンスを伺う。しかし、なかなか決定機を作れずにいると、終盤にかけては相手チームの防戦一方に…


 すると、後半43分だった、ペナルティエリア内でシュートを打たれるとこれが右ポスト直撃。そのまま左サイドへボールが流れていくと、走り込んだのは相手選手!

 そのままダイレクトでシュート!

 キーパーも必死に飛びついてボールを弾くが、弾ききれず無情にもゴールへ吸い込まれてしまう。

 同点に追いつかれてアディショナルタイムは3分の表示。

 ここから、こちらは残りの力を振り絞って怒涛の攻撃を見せるが、決定機にチャンスは相手キーパーに尽くセーブされ、鋭いシュートは僅かに枠を捉えられない。

 そして、無情にもタイムアップの笛が…



 1ー1の引き分けに終わり、上位との勝ち点差を縮めることが出来なかった。


 ◇


 帰り道、手をつなぎながら俺たちは上機嫌でスタジアムを後にしていた。


「寝坊してどうなるかと思ったけど、結果的にはいい休日になったね」

「あぁ、そうだな」


 ホント、一時はどうなるかと思ったけど、色んな意味でヒヤヒヤした一日だった。


「ねぇ、達也さ・・・・・・」


 振り向くと、美帆が下の方を見て俯きながらどこか哀愁漂う感じの横顔をしていた。


「どうした?」

「・・・・・・ううん、やっぱりなんでもない」


 美帆は言いかけたことを言わずにやめた。


 俺は首を傾げたが、これ以上何かを言及することはなかった。

 なんとなく、美帆のその表情を見た時に、大体のことは察したから・・・・・・

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