天皇杯 4回戦 実質決勝戦!?
ここは鹿島。そう辺境の地鹿島。
東京から電車に乗って2時間半。ようやくたどり着いたそこは、一言でいえば何にもない田舎だった。そこに佇んでいる立派なスタジアム。そう、こここそが、今まで数多くのタイトルを獲得してきた鹿島のホームスタジアムである。
今日は天皇杯4回戦がこの鹿島の地で行われる。
組み合わせ抽選会の結果。まさかの一番戦いたくない相手とのドローに、思わず頭を抱えたが、巷では『実質このカードが決勝戦でいいのでは?』などと言われている。
リーグで2位と3位という上位につける両チームの一戦は、白熱の予感を漂わせていた。
うちの会社には誕生日休暇なる者がある。
その定義も大雑把で誕生日の月の一日、誕生日祝いとして休暇を取ることが出来るというよくわからないルールだ。
まあ、今回はそれをうまく利用させてもらい、今日の午後休と明日の午前休に振り分けてもらった。我ながらうまい休みの振り分け方をしたと思う。
そして、いつも一緒にいる俺の彼女はというと、今日はアイドルライブのイベントに駆り出されてしまったため、試合に来ることは出来ない。
なんなら、ライブは夜からなので試合時は絶賛仕事真っ最中だ。
いつもは俺が見に行けず、美帆が一人で見に行くということの方が多いのだが、今回は一人で観戦ということになる。
平日のナイターで東京から2時間もかかる僻地にわざわざ仕事終わりに見に来る人はまずいない。
おそらく、今日の入場者数は中リスクないものになるのではないかと予想している。
そんなこんなで、スタジアムに到着して中に入る。既に開門時間を過ぎていたが、いとも簡単に席を見つけることが出来た。
ちなみに、このスタジアムは独特のルールがあり、再入場禁止でペットボトルのキャップを外されるという決まりがある。それなのに、出店で売っている食べ物はそんなに多くはないし、ペットボトルホルダー席についてないし……
その辺どうにかしてくれませんかね偉い人・・・・・・
そんな愚痴を頭の中で訴えつつ、俺は出店で買った名物のもつ煮を食べながら選手が入ってくるのをのんびりと待つ。
◇
やることもなかったので、スマホでゲームなどをして遊んでいると、ようやく選手たちがアップのために入ってきた。
今日は応援するサポーターの数も物理的に少ないので、声を張らないと厳しいな。
そんなことを思いつつも、俺は手拍子をしながら太鼓の音に合わせて応援を開始する。
今日のメンバーはサブメンバー中心だが、数名の主力選手も両チームとも先発に名を連ねていた。
リーグ戦ももちろん大事であるが、天皇杯のタイトルも隅にはおけないというお互いの思惑が見て取れるスタメンだった。
ウォームアップ中も選手たちのやってやるぞという気持ちがひしひしと感じられる。
これは、熱い試合展開になりそうだ、かんな予感を感じさせた。
◇
あっという間にウォームアップが終わり、選手紹介も終わったところで選手入場。
キャプテンと審判に花束贈呈の後、写真撮影、軽いウォームアップ、円陣を組んで各ポジションへと散った。
審判が時計を確認して、ピィっと笛を鳴らして新国立へ向けた試合がスタートした。
試合は開始13分。
DFラインを突破されてそのまま独走。
最後はキーパーの逆をついて相手が先制する。
だが、その直後右サイドで受けた選手がドリブル開始!一気にペナルティエリアまでもっていくと、相手選手が後ろから倒したと判断されPKを獲得する。
キッカーもPKを獲得した選手。
左サイドに蹴り込むがキーパーに防がれてしまう。しかし、そのこぼれ球を自ら押し込んで同点にする。
だが、ここからが不味かった。
ハイボール処理を今日先発のセンターバックの選手が何度も致命的なミスを犯す。
これがきっかけとなりバタバタと慌てたDFを掻い潜るように相手チームはスルーパス。抜け出した選手が、スルーパスを出した選手にマイナスのパスを送ると、そのままダイレクトでシュート。これが決まり、またもや先制点を決めた選手に決められて1ー2となる。
さらに、後半アディショナルタイム。スローインからのバウンドボールの処理を謝り、またも2点決めてる選手に抜け出されてしまう。
キーパーとの一対一を見事に決められて前半だけでハットトリック。スコア1-3として前半を終了した。
後半、引いて守りを固めてくる相手に対してなんとか打開しようとするが、やはり一軍と二軍の合同チームだからだろうか。
連携の不一致が生まれ、効果的なパスが出せずパスミスを連発する。
そして、そんなことを繰り返していたら、またも相手に速攻からDFラインの裏を取られて4点目を食らう。
そこからも連携が噛み合うことは無かった。無常にもタイムアップの笛。
結果1-4と大敗を喫して、元旦の新国立競技場での決勝戦を行うという夢はついえた。
これでサッカーのない。暇な令和2年の元旦が確定し、今年の天皇杯が終わりを告げた。
◇
帰り道、スマホをいじっていると仕事を終えた美帆から連絡が来た。
『 何があったの?!』
美帆の文面からは、試合結果のスコアを見て驚きを隠せないと言ったような感じがひしひひと伝わってきた。
俺は渋々現実を美帆に伝える。
『 力負け』
それだけで十分だった。
だって、90分全てにおいて力負けしていたのだから。
正直、あのままでは鹿島に勝てるのは10年後とかになってしまうのではないかと思ってしまうくらいの惨敗だったから。
既読が付き、美帆から返信が帰ってくる。
『 リーグは絶対優勝しようね!』
「切り替え早いなアイツ」
まあ、試合を見ていない人からすれば簡単に切り替えられるかもしれない。だが、この惨敗を選手たちサポーター1度見つめ直さないと、リーグ優勝なんて夢のまた夢。
ここからは総力戦。1軍2軍メンバーの誰が出ても勝てるチームというものを作っていかなくてはならない。そのためには、チームの底上げが必須だ。
そういう所を感じで、週末に控える仙台線に向けて選手、ファンが正念場を迎えようとしているのだった。
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