第10節 2度目の連勝へ

 GW真っ只中、今日もサッカーの試合は行われる。

 そして、令和になってからの初めての試合である。


 現在3位の広島をホームに迎えての試合。俺は実家に帰っているため、今日もダズーンでの観戦となる。


「ねぇ、おじさん一緒にあそぼ!」

「ごめんな、おじさん今からテレビ見るんだ。」

「え~遊ぼうよ遊ぼうよ!!」

「こら!駄々こねないの!」


 俺の姉である絵莉が自分の子供を叱っていた。

 その様子を横目に見つつ、俺はタブレットへと目を戻した。


 美帆は、一人で現地に観戦に行っているので、トークアプリで会場の雰囲気などの様子を写真で送ってもらっている。


『やっぱりいつもより人が多いね』

『そりゃまあ、GWだしね』

『頑張って応援してね!』

『任せて!』

 と送られてきた後にスタンプを押して会話を終わらせた。


 ダズーンでは、丁度選手が入場してきていた。

 会場のボルテージも、徐々に上がりつつあった。画面では、スターティングメンバーの顔写真と共に、フォーメーションごとに顔写真が置かれ、カッコイイ演出で映し出されていた。


 その背後の映像には、試合前の円陣を組む選手たちが映し出されている。


『さあ、間もなくキックオフです!』


 解説のアナウンサーの声が聞こえる。


 審判が時計を確認した。

『ピィ!』

 笛を吹いて前半がスタートした。



 前半は相手の引いた守りに苦しめられる展開。

 こちらがミスしたところを見逃さずに、ボールを奪い取って一気にカウンターを仕掛けてくる。

 何度かピンチがあったものの、ディフェンス陣が体を張って防ぐ。


 そんな中迎えた前半30分ごろ。

 中盤で相手選手からのパスをカットすると、一気に前線へドリブルを開始する。

 そして、ペナルティーエリアから少し離れた中央付近から左へ斜めに走りこむ選手へとスルーパスを出した。


 オフサイドなしで抜けだした選手は、そのままキーパーと1対1となり、落ち着いてキーパーまでもを交わして、シュートを放った。

 相手のディフェンスが懸命に足を延ばしてシュートを防ごうとしたが、運悪く足に当たったボールは、そのままゴールに吸い込まれ、ラッキーにも先制に成功した。これが、プロリーグで令和初ゴールとなった。

 得点を決めた選手は、令和の『令』の字をまねたゴールパフォーマンスを披露していた。


 前半はこのまま1対0で折り返した。


 後半は、相手が前がかりになり、中々チャンスを生み出すことが出来ず。守備で耐える我慢の時間帯が続いた。

 攻めあぐね、守備にも労力を使い果たした選手たちには、疲労の色が濃くなり始めた。

 監督もいつもよりも早めに選手交代を行い。フレッシュな選手を投入して守備に再び力を入れる。

 そして迎えた後半アディショナルタイム4分。

 相手がポーンと入れたロングボールを守備の選手が跳ね返したボールがペナルティエリア斜め右付近にこぼれる。

 これを拾った相手選手はゴール前へフワッとしたクロスを供給した。

 そして、ゴール前で待ち構えていたFWの選手がノーマークでヘディングシュートを放った。

 ボールは枠内に飛び、同点に追いつかれたかと思ったその時だった。

 一本の細い腕がスッと伸びてきた。

 GKが何とかボールをゴールから掻き出して見せる。

 映像で見ると、ゴールはラインを割り、ゴールに入っているようにも見えたが、判定はノーゴール。

 運にも味方されGKのビックセーブが飛び出した我チームは、なんとか1点を守り切り、今シーズン2度目の連勝を飾ったのであった。



 試合終了の笛と共に、俺は一人で叫びながらガッツポーヅをしていた。


「よっしゃぁ!!勝ったぁ!」

「ねぇねぇ、お母さん。おじさん画面見ながら一人で喜んでるよ??」

「いいから、こっちに来なさい!」


 なんか甥に変な人みたいに思われてしまったらしいが、今はそんなのお構いなしだ。

 俺はすぐさま美帆にメッセージを送った。


『勝ったね!』


 すると、すぐに既読が付き返信が返って来た!


『連勝!』


 そこには、勝利に酔いしれるサポーターの人たちが写っており、勝利の傘を回していた。


「いいなぁ~俺も行きたかったなぁ~」


 次の試合は必ず見に行こうと胸に誓って、タブレットの電源を落としたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る