第5節 九州遠征

 平日の金曜日、今日から2週間ぶりにリーグ戦が復活だ。

 俺は2週間前の休日の腹いせに、代休を取って3連休にしてやったぜ。

 年度末の最後の日で忙しい??っふそんなの関係ねぇぜ、俺がやるべき仕事は全部昨日のうちに終わらせてきたし、何か問題があったとしても上層部が何とかしてくれるだろう。

 グッバイ年度末、グッバイ仕事。

 俺は気持ちがものすごく晴れやかな気分に満ち溢れていた。

 羽田空港から飛行機に乗り、今は福岡空港から地下鉄で博多駅に降り立ち、昼間のとんこつラーメン屋に並んでいた。


「ここの評価☆4.3だって!すごいね。」


 隣では同じく仕事を休んできた美帆がスマホのグルメ評価サイトを見ながら感心しながら俺に見せてきていた。


「おぉ、確かにここの辺りじゃ飛び抜けて評価が高いな。」

「でしょ?私が言った通りにしておけばいいってことよ!」

「ってか、美帆の会社は年度末の忙しい時期に休んで大丈夫なのか??」


 俺が何となく疑問に思ったことを口にした。


「あれ?言ってなかったっけ?私の会社年末締め、それに今日は出社扱いだから。」

「は?」


 出社扱いどういうことだ??

 俺が顔で説明を求めると、美帆が答えてくれる。


「うちの会社基本的に市場マーケティングメインだから、『イベント営業』って言う仕事があって、趣味とか好きなものの市場調査をしてくれば基本的に遊んでても何にしてもいいのよ。」

「なんだそれ!?本当に仕事なのか??」


 いまいち未だに美帆がやっている仕事の内容が何度聞いても理解できなかった。

 用は、イベント運営をする際に、円滑かつ集客を集めるための現地調査を行い。結果をデータ化してその集積したデー化をもとに企業に提案する仕事らしいのだが、データ収集の一環としてサッカー観戦も含まれているらしく、アウェイの会場の現地で観戦した時の実際に体験してよかった点や問題点を見つけるのが仕事の内容に入っているということだそうだ。

 なんと羨ましい仕事なんだ…趣味をそのまま仕事として行うことが出来るなんて。

 美帆は勝ち組だな…

 そんなことを羨んでいると、並んでいた列が動き、俺たちの番になった。


「らっしゃせ-」

「2名です」

「はい、2名様ごあんない。」

「らっしゃせー!!」

「らっしゃせー!!」


 威勢のいい声でラーメン屋の従業員が出迎えてくれて、俺たちはテーブル席へと案内されて向かい合って座った。


「お冷です。ご注文は?」

「とんこつラーメン二つお願いします。」

「茹で方は?」

「固めで」

「私はバリカタで」

「ご注文承りました」


 店員はペコリと頭を下げると、注文を書いた紙をベリッと剥がして厨房の方へ振り返った。


「ご注文はいりました、バリカタ1、固1」

「ありがとうございまーす!!」

「ありがとうございまーす!!」


 威勢のいい声が店内に響いた。


「すごい元気なお店だね」

「そうだな…俺絶対にラーメン屋ではバイトできないな…」

「アハハ…確かに達也には似合わないかもね」


 クスクスと美帆が笑いながら俺がラーメン屋でバイトしている姿を想像していた。


「お待たせしました。」

「はやっ!」


 1分も経たないうちにラーメンが到着した。

 二つのラーメンがテーブルの家に置かれた。

 九州のとんこつラーメンの独特のラーメンの香りが鼻に突き刺さる。


「いっただっきまーす!」


 美帆はスマホで写真を撮ってから、手を合わせて挨拶をして箸を手にした。

 面を箸で掴んで、勢いよくズズっとラーメンを啜った。


「うん。おいひい。」


 頬を抑えながら美味しそうに顔を緩めていた。

 俺も箸を手に取って麺をつまんで口に含んだ。ズズっと啜って味を噛みしめる。関東の方のとんこつラーメンと違ってとても動物的な油の味が染みており、とても美味であった。


「美味しいね。」

「うん、やっぱり寄り道して正解だったね!」


 そんなことを話しながらラーメンに舌鼓を打ったのであった。





 ラーメンを食べ終えた俺たちは、再び博多駅に戻り、電車に乗った。

 電車に揺られること約1時間ほど、電車は福岡県から佐賀県に突入した。

 そして、今日のメインであるサッカースタジアムがあるターミナル駅に到着した。


 車窓から既に現代的なアートのような外観をしたスタジアムが駅からデカデカと見えていた。今日の対戦相手は佐賀県にあるチームで、ここ最近海外のスター選手を獲得して話題になっているチームである。俺たちは改札を降りて、駅前のコンビニで買いだしを済ませ、駅舎の反対口にあるスタジアムへ向かうため、線路にかかっている歩道橋を渡って、スタジアムの前に到着した。


 このスタジアムは全国でも駅から一番近く、アクセスが抜群であることで有名であった。確かに歩いて3、4分で既にスタジアムの前に到着したことを考えると、本当に駅の目の前にあるスタジアムであることを実感した。

そして、アウェイ側のゲートに並んでいる人々の最後尾に並び、開門までの時間を潰していた。


 金曜日の平日の夜開催ということもあり、今日はいつものアウェイよりもサポーターの数が明らかに少なかった。


「ホントにどうして金曜日開催なんて試合作ったんだろうね、都内から来てくれる旅行客も減っちゃうし、ビジネスチャンスが減る気がするんだけど」


 ボールペンを顎に置きながら、美帆がそんなことを口にしていた。


「まあ、新たな顧客を獲得するため、ってニュースで見たことある気がするけど…」

「にしてもよ、毎週1試合金曜日開催にすればいいってわけでもないのよ!」


 珍しく美帆が仕事モードになり熱くなっていた。


「確かに月末の金曜日で、大手の企業はプレミアムフライデーのところがあるかもしれないけど、今月は3月よ!3月!年度末で忙しい会社が多いんだから定時に帰れるわけないじゃない。それに、試合場所も考えたほうがいいと思うの、このスタジアムの周辺って言い方悪いけど何もないじゃない??博多から仕事終わりに来るとなってもどうしても最悪1時間はかかってしまうから、せめて都市圏から近い仕事終わりでも試合に間に合うスタジアムで開催するべきだと私は思うわ。ねぇ、達也もそう思わない。」

「お、おう…そうだな。」


 美帆の熱弁に圧を押されつつ、俺は苦笑いを浮かべながら答えた。


「う~ん…」


 美帆は思考しながらボールペンを再び顎に当てていた。どうやらこれがいわゆる、現地調査の仕事というものらしかった。真剣な表情でイベントの日程や場所にビジネスチャンスがあるかどうかなどの調査を念入りに体験したことを紙に書いていた。

 そんなこんなで、開門時間になって俺たちはスタジアムへ足を踏み入れた。

 スタジアムには、西日が差し込んでおり、綺麗な夕焼け空にスタジアムの緑が幻像的な景色になっていた。


「なるほど…景色がいいからナイトゲームにするのは意味があるわね。」


 美帆は開門して席を確保しても未だに仕事モードでピッチを睨みつけていた。


「なぁ…流石にそろそろ試合時間近いやめたら?」

「うるさい、ちょっと黙ってて」

「す…すいません…」


 仕事モードになった美帆を俺に止める術はなく、結局選手がウォーミングアップに出てくるまで美帆はずっと気が付いたことをメモし続けていたのであった。


 選手が登場してきて、応援が始まった。首都圏からわざわざ平日にさらに年度末に九州まで応援しに来るファンはやはり少なく、アウェイ側の席は半分以上が余ってしまっていた。


 人数が少ない分、声を張り上げて俺は応援を頑張った。

 選手たちも少ない応援であることは理解してくれているようで、各選手の応援をすると、丁寧にこちらに挨拶をしてくれていた。


 選手アップが終わり、選手紹介が大型ビジョンに映像が流れながら紹介されていく。相手のスーパースター選手が紹介されると、スタジアムが今日一番の拍手に包まれた。

 完全アウェイ状態の中、選手たちがピッチに入場をしてきた。

 お互いに握手を交わして、ピッチへと向かっていき、自陣の中央で円陣を組んで、気合いを入れ直した。

 ピーっと審判が笛を鳴らして、2週間ぶりのリーグ戦が再開された。





前半はお互いに攻め手がなく慎重な試合展開となる。終了間際に放ったこちらのロングシュートが僅かに枠を外れたくらいで特にこれといったシーンはなく、前半は終了する。


後半はギアを上げたこちらのチームが攻撃の応酬を掛ける。

後半15分のペナルティーエリア外の中央付近からのグラウンダーシュートは奇しくもポストに嫌われる。

後半30分にもペナルティエリアで相手を一人かわして放ったシュートがクロスバー直撃、さらに後半40分にもゴールまで約30メートルはあるであろう位置からロングシュートを放ったが、キーパーが触りクロスバーに直撃。決定的なシュートがこれでもかというほど、クロスバーに嫌われ、一点がことごとく遠かった。


結局このまま試合は0ー0のスコアレスドローで終わり勝ち点1を獲得した。





スタジアムから出て、電車に乗り込んで俺たちは博多市内まで戻ってきていた。


予約していたホテルに到着してチェックインを済ませてカードキーを受け取った。

エレベーターで部屋がある階へと向かい、カードキーで部屋を開け、ようやく1日を終えた。


「はぁー疲れた…」


美帆は部屋に着くなり、靴も脱がずにベットに倒れこんだ。


「お疲れ様」


俺も荷物を近くにあった椅子に置き、ベットに腰かけた。


「足パンパン…達也マッサージして~」

「しょうがないな…ほら靴脱いで」


俺が促すと、美帆は靴を脱いで、タイツを脱ぎ、スラットシタ白いスベスベの生足を出してうつ伏せの状態になった。


「よろしく~」


俺は息を一度吐いて、足のマッサージを開始した。


「キャ!・・・い、いきなり太ももから!?」

「あ、す、すまん・・・」

「ふつうふくらはぎでしょふくらはぎ!」

「お、おう。」


俺はおどおどしながらも今度は美帆のふくらはぎを掴んだ。

美帆のふくらはぎを揉むと、凝り固まっているとは思えないほどプニプニと程よい肉付きで柔らかい感触が俺の手全体に感じる。


「あぁ、ほぐれてく~」

「そう?俺が触った感じ全然張ってるように思えないんだけど…」

「男性と違って女性はそういうものなの、あ、そこ、いい…」


甘い吐息を出しながら悶絶していた。なんか声がいやらしく聞こえるが、邪念を振りはらってマッサージに集中する。

しばらくマッサージを行って、ようやく美帆がすっきりしたように起き上がった。


「ふぅー気持ちよかった~」


俺はなんとか美帆の甘美な声に耐えて、安堵のため息をついた。

すると、唇に何か感触を感じて慌てて目を開けた。

目を開けると、目の前にはキスを俺にしている美帆の顔があり、そのまま力任せにキスをむさぼるようにしてきた。

そのまま美帆は俺の下腹部の辺りをまさぐり、俺のモノに触れた。

キスを終えて、ニヤニヤと挑発的な目線を向けてきた。


「やっぱり、マッサージで興奮しちゃってたんだ、いやらしいの~」

「そ、それは…生理現象だから仕方がないというか…」

「いいよ、してあげる」

「え、んんっ!」


美帆は押し付けるようなキスをしてきて、俺たちはそのままベットに倒れていったのであった。

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