概要
ねえ、自分を責めないで。あなたは幸せになっていいんだよ。
ー母が飛び降り自殺を図ってから、11年の時が経とうとしていたー
「母の意識が戻るまで、私は幸せになっちゃいけないんだ」
意識不明の母と、行方不明の父を親に持つ少女、楓。
彼女は親に虐待を受けた過去を持ち、その身に傷を宿していた。
「私がいけないの。私が母を殺した」
自分を責めることでしか、母の凄惨な容態を受け止められない彼女の心は、既に崩壊寸前だった。
「ずっと、お前の側にいる」
楓の幼馴染で、彼女と幼き頃から行動を共にしてきた少年、瑠依。
彼は楓に対する自分の感情に気づきながら、彼女が傷つくことを恐れ、そこから目を背けていた。
「楓が『家族』であることを望むなら、俺はそうありつづける」
『家族』のように近くて、それでもどこか遠い二人の関係は、11年
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!凍りついた暗闇に取り残され——ただ手を伸ばし、あなたの熱を待っている。
兄と妹、姉と弟。対称的で対照的な二つの家族と、彼らを取り巻く友人たちが複雑に織りなす心模様を丁寧に描きあげた、ドラマティックな物語。
幼少時代の虐待と母親に降りかかった不幸。そのすべてを負って傷だらけになった心に翻弄される少女と、彼女を守ろうと必死に尽くす少年が、物語の主軸になっていきます。
優しく弱い楓と、優しく脆い瑠衣。
楓の傷はいまだ深く、同い年の瑠衣はそばで支える以外にすべを持たない。
曖昧で危ういその関係は、しかし止まらない時の流れに容赦なく浸食され、望む望まざるに関わらず変化を促されてゆくのです。
彼らより少し歳上である兄と姉も、傷の深さは変わりなく。
新たな人間関係、少しずつ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心が満たされる日を願ってやまない物語
「生まれてきて、良かったんだろうか」
そう悩んだ事はないだろうか?
自己肯定感と言われる、人生を左右する大切な感情だ。
あらすじで躊躇いを感じた方も居るだろう。重い展開は多く、読みながらずしりと心に重たいものが伸し掛かる。それでもなお、先を読みたいと思える魅力がある。
一番感じるのは、心情や情景の描写がとても丁寧で、心惹かれる事だろう。まるで文章から彼女達の心の色が浮かぶ様で、重いテーマなのにするりと自分の心に入り込んでくる。共感し、見惚れ、感情移入してしまう。
物語は少女と少年の関係を中心に語られる。幼い頃の氷菓の思い出から、現在、そして未来へ。幼き頃の決意は変わらず、しかし二人の関…続きを読む