最初はワンアイディアのショートストーリーかと思った。
しかし読み始めてすぐ本格的な推理ものとわかって夢中になった。
主人公の「僕」が地道に捜査を続ける展開がよかった。
超人的な推理力や直感ではなく、学生が英単語を一つずつ覚えるように謎がゆっくりほどけ、また謎が霧のかなたに消えたりする。
序盤の展開はやや遅めだが、「ある瞬間」物語のテンポが一気に急迫する。
この緩急も見事だった。
読んでいて戦慄を覚えた。
PAシートやシールドの八の字巻きが出てきて
「作者さんは絶対バンドやってたな」
と思った。
バンドの蘊蓄学がそのままヒロインの死の謎に直結していて、ここも見事だった。
「僕」が勃起すると死んだ女の子が幽霊となってあらわれる。
これが本作のタイトルの元だが、コメディ味はあんまりない。
むしろちょっと悲しかった。
山田風太郎の『幻燈辻馬車』で、幼い娘が「お父」と叫ぶと戊辰戦争で死んだお父さん(すごく若い)の幽霊が助けにくる話を思い出した。
すべての謎が解けたあとのエピローグは感動的だった。
主人公と作者がともに「全力を出し尽くした」感があって、もう若くないのに泣けてきた。
この感動はめったに得られるものではない。
青春ミステリーの傑作と断言する。
ぜひご一読をおすすめします。
初恋の相手を突然失った主人公。警察ですら『自殺』だと断定したにもかかわらず、彼はどうしてもそれを信じる事が出来ませんでした。
そんな中、悲しみのあまりつい暴走してしまった『本能』に従っていると、そこに現れたのはなんと死んだはずの初恋の相手……の幽霊!
色々と厄介な条件でないと現れない彼女の幽霊と共に、彼は奮闘する事になります。
どうして彼女は死ななければならなかったのか、それを確かめるために。
物語の中で『探偵』となる主人公が出来るのは、地道かつギリギリの捜査、何とか振り絞る知恵、そして『本能』に従うと初恋相手の幽霊を呼び出す事ぐらい。
単なる学生でしかない彼に出来る内容は限られています。
それでも、主人公は大切な誰かのため、覆い隠された事態の真相へ挑んでいくのです。
その先に何が待っているのか、知る由もなく……。
タイトルのインパクトに負けない、読者の予想と心を次々に揺れ動かす、読み応え抜群のミステリー作品。
果たして、彼がイきつく先は……?
是非、皆様も『素人探偵』の行方を見守り、そして応援してはいかがでしょうか。
「性的に興奮してる時は思考力が落ちるからその状態で探偵をするという設定は無理があるのではないか」と最初思ったが、思春期特有の純粋さと性欲が入り混じった状態での性欲起因と言うより生理現象としての勃起だったためその問題は無かった。また、「相手が死んでいる」という事情から劣情を抑えようとする意識が強まるのは当然であり、心理描写も不自然に感じなかった。
プロローグのまだ読者が物語に入り込んでない段階でのヒロインと主人公の人物像の説明は、読むのがだるく感じるほど長くも人物像を把握できないほど短くもない適度な量で無駄な情景描写なども無く読みやすかった。