予期せぬ展開 4
――昼休みの食堂。
我が校――私立水上大学付属高等学校――には学食がある。
手ごろな値段でボリュームのある食事をとれるのはとても楽でいい。
食券を買いカウンターに出し、
空いている席を探しているとクラスメイトが手を振っていた。
「大丈夫か?もう治ったのか?」
「ああ、もう大丈夫。寝たら良くなった」
心配してくれたみたいだ。ありがたい。
「席余ってるし座れよ」
「サンキュ」
二人席の空いている一つに遠慮なく座らせてもらって唐揚げ定食を食べる。
「お前、病み上がりでそんなに食えるのか?」
「お腹は空いてるんだ。いけるいける」
食欲はあった。というか午前のほとんどを寝て過ごしたのにいつもよりおなかが空いている気がする。
半ば自動的に食事を口に運びながら考え事をする。もちろん香川優姫のことについてだ。
あの衝撃的な出来事が頭から離れない。
真っ直ぐにこちらを見つめる瞳。あてられた唇の感覚。ありがとうと言った微笑み。
彼女の仕草が、感触が目の奥に張り付いて離れない。
あの熱のこもった瞳に――
箸が皿を叩く音で意識は食堂へ戻ってきた。無意識のうちに箸を空の皿に運んでいたようだ。
時計を見る。別にゆっくり食べていたわけではないようだった。
「大丈夫か?食べてる間ずっと上の空だったぞ」
「ああ、ごめん。考え事をしてた」
「そう、食べ終わったなら行くぞ。次体育だけど大丈夫か?」
「大丈夫、出るよ」
食器を返しに行くために席を立つ。
~~~
午後の授業は散々だった。
ずっとあのことが頭から離れず体育では頭にバスケボールが当たるし、英語では細かいミスを連発するし……。
あれもこれも全部、
なんて意味のない悪態を心の中で吐いてみたり。
部活には入っていないのでそのまま帰る。
ところが昇降口で靴を履き替えた時、新たなイベントは起こった。
「島村くん」
目の前に香川先輩が現れた!
遼はどうする?
逃げる
応答する
構える
結局どの行動も取れずに驚きのあまり固まってしまう。
「島村くん?ちょっと付き合ってくれる?」
「は、はい?」
「じゃあ、島村くん借りるね」
一緒に帰ろうとしていた友達(昼食を一緒に摂った奴だ)に魅惑の笑みとともに告げ、僕の腕をとる。
「は、はい。どうぞ……」
友達甲斐がない友達だ……。見捨てないでくれよ……。
もう靴を履いてしまっているので逃げられず、先輩に引きずられていく。
せ、先輩、何か当たってます……、ふわっとしたのが……。
なるべく考えないようにして半ば引きずられながら歩く。
~~~
校門まで来て先輩の足が止まった。
「今から、時間ある?」
あの微笑みを向けてくる。
この人こうすると断れないってわかってるな……。
仕方なく頷き、肯定を示す。
「じゃあ、行こ。時間を無駄にしたくないし」
香川先輩はまだ組んだままだった腕を引っぱり、進もうとする。
「ちょ、ちょっと、やめてください。歩けますから。付いて行きますから」
「ダメ、このままで」
強引に、さっきより力を強めて腕を絡めてくる。
これじゃあまるでカップルみたいじゃないか……。
周囲の視線に耐えながら引きずられ歩いていく。
もう、なんでこうなるの?
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