誰にでも秘密はある 5´
「どうしたのよ、女子同士の話って」
「ん~? 特に深い意味はないんだけど」
「意味ないなら私は戻るわよ」
店から出ようとする茜の手を掴んで引っ張り隣に立たせる。
何のために男子禁制のこの店に連れ込んだ理由をはっきりさせないと逃げられるだろう。
「下着選び手伝って欲しいなって」
「優姫、あんたもしかして……」
「そんなんじゃないわよっ! ただちょっと色仕掛けというかその……」
「どっちにしろアウト」
「そんなぁ……」
遼くんの好みがどのあたり把握したいだけなんだけど……。
この1か月一緒に暮らしてても全く発散する素振りもないし、パソコンとか携帯の検索履歴を調べてもそれらしきものは全く出てこないし……。
もしかして聖人君子なの? それだと私が生殺しになっちゃうんだけど。
「まあいいわよ、選んであげる」
「本当? ありがとう!」
「お礼を言われるほどのことじゃないと思うけど。で、どんなのがいいの?」
「……私が持ってないやつ?」
「どうして疑問形」
「だって、一通り遼くんに見せつけたのにちっとも反応してくれないんだもん」
すると茜は大げさにため息をついて首を振った。
どこかおかしいところがあった? 好きな人の好みを知りたいのは誰でも同じでしょ?
「優姫、いつから痴女になったの……?」
「痴女じゃないわよっ! 好きな人の好みを知りたくなるのは当然でしょ?」
「方法が問題でしょ。いつか喰われちゃうわよ?」
「遼くんになら私はいいんだけど……肝心の相手が手を出してくれない……」
さっきより大きなため息をついて俯く茜。
顔は見えないが多分呆れ顔を浮かべているだろう。
「何とか言ってよっ、私にとっては深刻な問題なのっ」
「あーはいはい、大変ですね」
あからさまに興味のない素振りをされるとさすがに頭にくる。
まあ、これしきで逃がしたりはしないけどね。
「そんな態度取るんだ。じゃあ隼人さんに言っちゃうよ?」
「何を言うのよ?」
「……実は隼人さんにもっと甘えたいって思ってること」
「わーっ!! 何で知ってんのよ!」
「見てればわかるわよ」
茜は顔に出やすい。今も顔を真っ赤にして私の口を塞いでいる。
端から見ただけですぐわかるのだから本人に言うまでもないだろうけど、脅しというか交換条件には使えそうだ。
真正面から見ている隼人さんはとっくに気付いていると思う。気付いていないのなら相当な鈍感だ。
「あーもうっ、それで普段はどんなのつけてるの?」
「寝るときはベビードールとかネグリジェとか?」
「島村くんがなんで手を出さないのかわからないわ……」
「そうでしょ?」
「どうして私たちの相手はこうも欲がないのよ……」
「……つまり茜も誘惑してみたと?」
「そういうこと――違うっ、今のなしっ」
「やっぱりそういうことだったんだ……」
茜の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
今のは完全に自爆だ。私に責任はないっ。
でもやっぱり隼人さんとはそういう関係だったのね。
外であれなんだから家の中ならもっと甘えてると思う。
「じゃあ茜の下着も選ばないとね?」
「……あんまり派手な奴にしないでよ?」
「了解」
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