吸血鬼だって普通の女の子なんだよ?

赤崎シアン

1話 僕と先輩

予期せぬ展開 1

 教室の窓から外を眺める。

 窓の外は校庭で別に何かが見えるわけではない。でも漂ってくる国語教師の声に集中できるわけでもない。

 黒板にカツカツと音を立ててチョークが文字を記していく。

 誰かがカチカチとシャーペンのボタンを押し芯を出す。

 誰かがパラパラとノートをめくる。

 そんな静かな騒音を聞きながら僕は眠りに落ちていった。



 ~~~



 目が覚めると国語教師が教室から出ていくところだった。

 丸々一時間寝過ごしたか……。

 しかし寝る前よりさらに体がだるい。これはもうだめだ、保健室に行こう。

 席を立とうとして机の脚に躓いて転びかける。


「大丈夫か?顔色悪いぞ?」

「すまん、保健室行ってくる。先生に言っといてくれないか?」

「了解」


 クラスメイトに頼んで保健室に足を向ける。

 休み時間の喧騒が頭の中で反響して気持ち悪い。

 結構熱もあるみたいだ。



 ~~~



 保健室の前まで来ると騒音もかなり落ち着いてきた。

 ノックしてドアを横に滑らす。


「失礼します」

「はーい」


 養護の先生はパソコンから目を離してこちらを眺めて言う。


「顔色悪いね。熱測ろうか」

「はい」


 長椅子に腰かけ、体温計を受け取りわきに挟む。


「クラスと名前は?」

「一年二組、島村しまむらはるかです」


 初めてこの学校の保健室に来たが意外と広く、全体的に白かった。中学の保健室はソファが置いてあって色もカラフルだった。

 ベッドが三つあって奥の一つはカーテンで囲われていた。

 音が鳴って測定終了を知らせる体温計。

 三十八度八分……。案の定熱はあったようだ。


「見せてみ」


 体温計を先生に差し出す。画面を見て少し笑う。


「家の人は?」

「いないです」

「じゃあとりあえず寝てなさい。起きたら帰るか、授業に戻るか考えなさい」

「はい」


 素直に頷いて真ん中のベッドに入る。


「昼休みには起こすからね」


 そう言ってカーテンを閉めてくれた。


 入学して二週間、環境も変わって疲れが出たのかな……。

 朝はただの寝不足だと思っていたけれど風邪をひいていたのかもしれないな……。

 なんてことを考えながら右側を下にして寝た。



 ~~~



 暑い。汗がちょっと出てきた。ブレザー脱ぐの忘れてたな。

 布団を剝いで目を開ける。

 そして、数秒固まった。


 何故なら、座っていたから。


 詳しく言うと、見ず知らずの美少女が僕の腹の上に馬乗りになっている状態だ。


 そして、美少女は微笑んだ。


「おはよう。よく寝てたね」


 僕の高校生活は急激な展開を迎えた。


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