予期せぬ展開 2

「おはよう。よく寝てたね」


 そう言って彼女は微笑んだ。


 思わず見惚れてしまう。体が固まる。

 目の前には見たこともないような美少女。熱のある体。

 体温がどんどん上がっていく……。

 少し彼女が不思議そうな顔をした。彼女は手を僕の頬に当てる。


「熱があったの?」


 全く身動きが取れない。養護の先生に見られたら不味いんじゃないか?最悪謹慎かもしれない。


「先生ならさっき職員室に行った。しばらく戻ってこないと思う」


 僕の視線を読んだのか、そう呟く。


「どいてくれませんか?暑くて水を飲みたいんですけど」

「ごめんなさい。ちょっと待ってて」


 謎の美少女はさっと僕の上から飛んでカーテンの向こう側へ行った。

 何だあのひとは?何の意図があって僕に馬乗りになっていたんだ?

 体を起こし足を下してベッドに腰掛ける。

 やっと深く息をつく。

 さっきの微笑みが頭に張り付いて離れない。まるで悪戯を成功させたかのような微笑みだった。

 あの笑顔が似合う人はなかなかいないだろう。

 小悪魔、その言葉を体現したかのような容姿、仕草だ。


 水の入ったコップを持ってまた彼女が現れた。


「……」


 無言でコップを差し出してくる。


「ありがとうございます」


 一応礼は言っておく。実際どこの誰かもわからないわけだし。

 そのままベッドの横に立っている美少女は細く身長も女子にしては高め――百六十センチ弱――で肌は真っ白だ。文句のつけようがない。

 何故、保健室こんなところにこんな美少女が居るのだろう?


 コップの水を飲み干し、コップをベッドの横にある椅子に置いておく。


「貴女の名前は?」

香川かがわ優姫ゆき、二年三組」


 上級生だったようだ。失礼な態度はなかったよな……?


「えっと、僕の名前は――」

「島村遼、一年二組」

「……何で知ってるんですか?」


 びっくりして一瞬止まってしまった。


「そっちで寝てたから」


 と美少女――香川先輩が一番奥のベッドを指さす。

 盗み聞きとは、悪い趣味だ。

 でも聞かれたなら仕方ない。

 いろいろ聞きたいこともあるが体が重いのを言い訳に寝ることにする。


「風邪を移したらいけないので寝ますね」


 そう言ってベッドに潜って布団を掴もうとすると、ヒョイと香川先輩がまた僕の上に乗っかってくる。

「待って」


 また馬乗りになって僕を見下ろしてくる。


「何ですか」


 そう聞くと彼女は少し横を向いてから僕に向き直り、真正面から目を見て言った。



 意味が分からない。見ず知らずの初対面の年下の男子に何を言っているのだろう。と思った。

 しかし、彼女のとった行動は僕の想像するものとは全然違っていた。



 彼女は真っ直ぐ僕の目を見ながら呟くと、


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