先輩と先輩 2

 時間は飛び、放課後までジャンプする。


 僕は昇降口で靴を履き替えていた。

 達也たちは先に帰っちゃったし今日は寂しく一人で帰りますか。


「お、島村くん」


 声がかかり振り向く。


「どうも、藤崎先輩」


 少年のように笑いを返してくれる藤崎先輩。

 その後ろには、ばつが悪いという顔をした優姫先輩。


「優姫先輩も」

「…………」


 優姫先輩が黙っている間に藤崎先輩が僕の肩を掴んで顔を寄せた。


「ちょっと時間もらえる?」

「は、はい」


 捕まってしまった。




 僕ら三人はファストフード店に横並びで座っていた。

 左から僕、藤崎先輩、優姫先輩の順で並んでいる。


「それで島村くん、優姫と付き合ってるんだよね?」

「優姫先輩は何かおっしゃいましたか?」

「優姫は何も、ただ一回『遼くん』と言いかけたけど?」


 優姫先輩、ドジりましたね。


「わかりました、全て話します。いいですよね、優姫先輩?」

「仕方ない」

「やっと聞けるのかー、楽しみ」


 僕は一度深呼吸をして一言、言い放つ。


「僕らは付き合っています。四日前から」

「いいねー、初々しいね」

「以上です」

「えー」

「僕からは何も言いません」


 入るときに注文したコーヒーを一口飲む。


「じゃあ聞けば答える?」

「ある程度は」

「遼くん?」

「答えないものもありますから」

「仕方ない、それでいこう」

「はいどうぞ」

「じゃあ、どこまでしたの?」


 いきなり突っ込んでくるか。


「キスまでです」

「おーいいね。次、優姫のいいところを三つ」

「積極的なところ、素直なところ、赤くなった顔が可愛いところ」

「即答とは、やるね」

「これくらい、好き合ってるんですから」

「っ~~~!!」

「今も顔を赤くしているところだろう。最後、優姫とはどこまで付き合っていきたい?」

「もちろん死ぬまでです。多分僕は優姫先輩しか愛せません」

「…………」

「…………」


 僕はもう一度コーヒーを口に含む。


「これ以上はやめておこうか、優姫の身がもたない」

「はい」


 優姫先輩は完全にオーバーヒート。机に突っ伏してしまっている。

 藤崎先輩も苦笑いだ。


「君は顔色が変わらないね?」

「僕の特技はポーカーフェイスですから」

「私にはできないや」


 藤崎先輩は上を向いてからため息と同時に顔を下に向けた。


「親友の座を降りる気はないから」

「そこまで思ってませんよ」

「そう、ならよかった」


 藤崎先輩は安心したようにふふっと笑った。

 僕はコーヒーを飲み干し、席を立つ。


「優姫先輩の送り、任せてもいいですか?」

「いいよ」

「では先に帰ります」

「じゃあね、また」

「はい」




「優姫」

「なに?」


 しばらくして復活した優姫は茜に話しかけられる。

 まだ少し熱が残っているが聞かなくては。


「あの子、悲しい目をしてた」

「遼くんが?」

「うん、あの子は何かある。優姫は何か知ってる?」

「一人暮らしってことしか……」

「彼氏なんだから、もっと踏み込んで聞きな?」

「わかった」


 こうして少女二人は遼の異常に踏み込んでいく。


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