僕の平穏は…… 3
「それでこれからどうしますか?」
「そうね、どうしましょう?」
昼食を食べ終わった僕らは何をやるか迷う。
買い物は午前中で済ませてしまった。僕の手には三つの袋がある。
僕は帰ってもいいんですが……。
「じゃあホテルに行きましょう」
「ちょっと待ってください。なんでそんなところに」
「今日は血を吸わせてもらえないのかなって思って」
先輩はほとんど毎日僕の血を吸っている。
学校がある日は先輩の家か屋上階段でしていた。
毎日のように血を吸われているが今のところ異常は無い。
無いなら大丈夫なのだろう。
「それならその言い方はやめてください。心臓に悪いです」
「でも他にそういうことができるところって無いじゃない?」
「先輩の家はダメなんですか?」
「今日はお父さんがいるから」
「そうですか」
よし、今日は回避できる。
吸われた後の倦怠感が結構つらいのだ。
しかもその時に限って先輩はちょっかいを出してくる。
「じゃあ島村くんの親御さんは?」
「え?」
「御在宅?」
「は?まさか――」
まさか僕の家に?ちょっと、やめてくれよ……。
僕の唯一の安息所に踏み入らないでくれ……。
「そのまさか。行きましょ」
「ちょ、ちょっと!」
僕の意見は無視ですか。というか聞いてもくれないんですか。
僕の腕を引っ張って、駅に向かって行く先輩。
どうしてこうなるの?
~~~
「結構広いのね」
「まあ」
結局家に上げてしまった。
あんな美人の先輩の頼みを断れるはずがないだろう?
って誰に言い訳してるんだ、僕は。
早速先輩は
僕は諦めてソファに座って先輩を眺める。
「島村くん?」
「はい?なんですか?」
「ここ二人暮らし?」
「いいえ」
食器棚を見ていた先輩がいきなりこっちに問うてくる。
もうバレたか。早くないか。
「じゃあ、一人暮らし?」
「……そうですよ」
「…………」
先輩、目を輝かせないでください。
やめてください。こっちを見ないでください。
視線に耐えられず、目を逸らす。
「それにしても広いね。四人家族でも住めるんじゃない?」
「そのくらいはあると思います」
「部屋はいくつ?」
「二つですね」
そう、この家、一人で住むには広いのだ。
先輩の言う通り、家族で住んでも狭くないくらいには。
「いいなー、私も一人暮らししてみたい」
「家族がいたほうが圧倒的に楽ですよ」
「そうだけど、プライベートスペースみたいな?」
「先輩のお母さんはそういうこと先輩に対しても弁えてるじゃないですか」
「そうなんだけど……」
先輩はちょっと気に食わなかったのか、荒っぽく僕の隣に腰を下ろした。
反射的に立ち上がりキッチンへ向かう。
「先輩はコーヒー飲めますか?」
「砂糖があれば」
「わかりました」
いつもお世話になっているコーヒーメーカーをセットしてマグカップ二つと砂糖を用意する。
「食器、だいたい二組ずつあったけど一つは客用?」
「そうです。来たことはありませんが」
「じゃあ私が――」
「やめてください」
「……まだ途中」
「どうせ、『じゃあ私が住む』とか言うつもりだったんでしょう?」
先輩はこちらに向けていた顔を背けてしまった。
先輩は無視して食品棚からクッキーを出して皿に盛る。
コーヒーができたのでカップに注いでソファ前のテーブルに置く。
もう一往復、お菓子と砂糖を持ってくる。
「どうぞ」
「……ありがと」
先輩にはこれで気持ちを落ち着けてもらおう。
僕も砂糖を一杯入れて混ぜる。
たまには砂糖を入れてもいいかもしれないな。
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