誰にでも秘密はある 1
「デートに行きましょう!」
そう優姫さんが高らかに宣言した。
…………?
「デートなら毎日家でしてるようなものじゃないですか」
「そうだけど……じゃなくて久しぶりに外に出たいのっ」
今日は晴天。加えて日曜日で雨の予報もなし。確かにデート日和なのだが……。
「外暑いですよ? 日差しも強いですよ?」
いくら日焼け止めを塗るからと言っても梅雨明けのもう夏といってもいい陽気のこの日に外に出たいのか……?
もう大型ショッピングモールなどはエアコンが入り始めているくらいの季節なのに?
暑いし、水分補給しなきゃいけないし……。
「珍しく乗り気じゃないのね?」
「僕にだって気分はありますよ」
「それはそうだけど……」
そんな捨てられた猫みたいな目を向けないでください……。
「……折角新しい洋服でデートに行こうと思ったのに」
そんな優姫さんの小さな呟きを僕は聞き逃さなかった。
「そうならそうと最初から言ってください」
「え? もしかして聞こえてた?」
「僕の耳は特別製なので」
「洋服で釣れるのはなんか解せない……」
細かいことは気にしないほうが身のためだ……うん。
それより支度をしないと。
「20分後に出発でいいですか?」
「先に外で待ってて、着替えるだけだから」
「わかりました」
~~~
約束通り玄関を出てすぐ横の壁にもたれかかって優姫さんを待つ。
服装は夏らしく、ということで下は色の薄いスキニージーンズ、上は白の緩めの半袖、それに使い慣れた大きめの黒の肩掛けバックの三点セット。
時計を確認。20分経過。
「ごめん、お待たせ」
慌てた様子で玄関から飛び出てきた優姫さん。
その姿に一瞬息が止まってしまった。
「どこかおかしかった?」
そう言って優姫さんは自分の洋服を確認し始めてしまった。
優姫さんの服装も夏らしいものだ。
淡い青のワンピースに茶色のサンダル、白くてつばの広い帽子というこれまた黒髪の映える格好をしている。
「……っいえ、おかしくないですっ」
「どうしたの? 顔赤いけど」
「別になんでもないです……」
見つめられることに耐えられなくなり、つい目を逸らしてしまう。
「なんだ、照れてるのね? 私の美貌に心奪われちゃったってことね?」
「…………」
否定できない自分が悔しい。
だってあまりにもその服装は似合い過ぎている。どこかのモデルみたいな感じだ。
まともに目も合わせられない。こんな状態で一日一緒に居ろと?
羞恥に耐えられるのだろうか……。
でもデートするのは決定事項。なら意識しないようにしないと……。
「最近帰りが遅いと思ったらこれを企んでいたんですね?」
「だって好きな人には綺麗な私を見てもらいたいじゃない?」
一片の照れも見せずに言ってのける優姫さん。
どうしてそんなに可愛いことが言えるかな……。
「ほら、照れてないで行こ?」
「どこにしますか?」
すると彼女は僕の手を両手で掴んで無邪気な笑みで答えた。
「いつか行けなかった映画、忘れてないよね?」
~~~
違和感を覚えた方。正解です。
詳細は近況ノートを確認していただければ幸いです。
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