遼の気持ち 3

 寒気がして目が覚める。

 どうやら布団から足が出ていたらしい。

 遼くんのベッドはセミシングルだから少し広いけど二人で寝るには少し狭かった。

 隣に寝る彼を起こさないように起き上がる。


 眠った時から全く動いていない遼くん。寝がえりはうたないのだろうか。

 相当ぐっすり寝ているのだろう。

 吸血は意外と体力を使うらしい。この前お母さんに聞いたら『お父さんもすぐ寝ちゃうのよ』と言っていた。

 遼くんは最初は寝ていなかったけど最近は寝るようになった。

 吸い過ぎてしまっているのだろうか。

 そんな不安が頭をかすめるが振り払う。

 それでこの寝顔が見られるのだったら安い。


 遼くんはまつ毛が長い、童顔だ。肌もきれいだしそんなに日に焼けてないし。

 頬に指を立ててつつく。柔らかい。肌触りもいいし少し妬ける。


「ん~……」


 遼くんが少し動く。眠りが浅くなっているのだろう。

 そろそろ起きるはずだ。

 布団を剥ぎ取って遼くんにまたがる。


「おはよう、遼くん」

「……おはようございます、優姫先輩」

「眠そうだね」


 遼くんは目をこすってあくびを噛み殺している。

 微笑ましい光景だ。なかなか隙を見せてくれないのに今は隙だらけだ。

 遼くんが体を起こして目を開く。


「せ、先輩!スカートでそういうことはやめてくださいっ!」

「え?」


 確かに今は学校からの帰りだから制服だけど……。


「恥ずかしいの?」

「見えそうで怖いんですっ」


 すごい速さで顔を横に向ける遼くん。顔が赤い。


「下りてくださいっ」

「今日は可愛いやつ着てきたのに」

「っ」


 ブラフを仕掛けると案の定引っかかる。目だけこちらを一瞬見た。

 どこがブラフかというと可愛いやつではなくいわゆる勝負下着というやつだからだ。


「遼くんなら見せてもいいよ?」

「早いですっ、僕たちにはまだ早いですから!」


 スカートの裾を少し上げると完全に目を閉じて顔を真っ赤にする。

 なんだ、残念。

 ならもう一押し。


「今度は私を食べる?」

「~~~っ!しません出来ません!早くどいてください、出て行ってください!」


 そう言って部屋のドアを指さす。

 まあ仕方ないか。準備もしてなかったし。

 私は諦めてベッドを下り、部屋を出た。


 リビングのソファに座り頭を抱える。

 あぁ~、何してるの私。これじゃあまるで痴女じゃない。嫌われちゃったかな。

 したくないわけじゃないけどわざわざ言うことでもないのに!

 しかも今日に限って勝負下着なんてやる気だったみたいじゃない!

 自分のうかつさと暴走具合が恥ずかしい。多分今は耳まで真っ赤だろう。鏡を見るまでもない。


「私のバカぁ……」


 弱々しく自分を罵った。




 顔の熱が引かない。

 今、目を閉じるとさっきの光景が浮かんできそうで閉じられない。

 先輩の白い太もも。おはようと笑った顔。

 ダメだ、目を開けてても浮かんでくる。

 恥ずかしくて先輩と何を離していいかわからない。

 しかも先輩は明確に僕を誘ってきた。僕にそんな甲斐性はないけれど情けない。

 最後の最後でヘタれたのだから。

 でもいろいろ準備とかしてなかったし……。


「先輩のフォローしなきゃ……」


 少なくとも言い訳をしなければいけない。

 やっとベッドから下りて部屋のドアに手をかけた。


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