3話 友人の言うことは聞きましょう

友達は大事 1

 連休三日目。デートはキャンセルになった。

 朝7時に詩織さんから電話があり(番号は先輩から聞いたそうだ)体調が優れないことを聞いた。

 本当に体調が悪いのか、と一瞬考えてしまったが素直に聞いておく。

 お見舞いもいらないとのことだった。

 ということで一日暇になり初日に読みかけだった本を読んでいた。今度はソファで。


 掃除も洗濯も済んでやることがないなら本を読む。

 運動もたまにはしなきゃな。中学の時と比べたら少しなまってるだろうな。

 ページをめくった時、携帯が鳴った。電話か。

 相手は達也。出るか。


「もしもし」

『よお、はるちゃん。今日は空いてるか?』

「はるちゃん言うな。空いてるぞ」

『オーケイ、桜もいるけどいいか』

「いいよ」

『じゃあ昼飯食って俺の家な』

「わかった」

『じゃ、よろしく』


 予定が入った。時刻は11時半。

 ゆっくり食べて1時くらいに行けばいいだろう。

 さて、昼飯は……パスタでいいか。

 たまにはレトルトを使わずに和風きのこでもつくるか。

 一人だとパスタが楽だから逃げちゃうな……。

 そんな風に思ってキッチンに向かった。



 ~~~



 達也の家に着いた。普通の木造一軒家だ。

 前に一度来たことがあったので迷わなかった。

 今回も迷わずインターフォンを押す。


『はい』

「島村です、達也くんはいらっしゃいますか」

『ああ、島村くんちょっと待ってね』


 出たのは達也のお母さんだ。前に少し話をした。

 玄関が開けられ、達也が出てくる。


「入れよ」

「お邪魔しまーす」


 靴を脱いで家に上がる。


「今日はずいぶんとラフな格好だな」

「そう?」


 普通にジーパンにパーカーだけど。

 あ、パーカーがジャージっぽいか。


「これパーカーだから」

「そ、ならよし」


 僕を置いて階段を上っていく。

 僕も慌てて追いかける。今日も達也の部屋みたいだ。


「お待たせ」

「僕が一番最後だったのか」

「レディを待たせるなんて基本がなってないのね」

「誰がレディだよ」

「達也、そのへんで――」

「あら、達也の目には女の子が見えないのかしら?」

「お前は男でも通じるだろ?」

「は?私はれっきとした女です!」

「へ?ほんとに?初めて知ったわ……」


 これはダメだ。放っておこう。

 許可を取らずにゲーム機とテレビのスイッチを入れる。

 前も触ったしいいだろう。


「達也、そんなんじゃモテないわよ?」

「お前が心配することじゃねえだろ?」

「一応幼馴染のよしみで言ってあげてるんじゃない」

「ならこっちこそ言ってやるぜ?そんな口が悪い女はモテねえんじゃね?」

「うるさいわね!あんたに心配されなくても大丈夫ですぅー!」

「は?どの口がそれを言ってんの?」

「ゴールデンウィーク前に告白されましたから?」

「じゃあこんなところにいないでデートしてこいよ!」


 デートという言葉に少し反応してしまった。見られてないと思う。

 ソフトは……格闘対戦のやつでいいかな。


「断ったのよ!」

「お前みたいなのにそんなにチャンスがあるとも思えないけど?」

「うるっさい!」

「おっと」


 ついに手が出たようだ。まあ達也なら大丈夫だろう。

 ゲームが起動して音が鳴る。

 達也と桜が一斉に振り向く。


「「何やってんの?」」

「見ての通り、ゲーム」

「よくこの状況で出来るな、お前」

「私だったら無理ね」

「夫婦喧嘩は犬も食わないからやめとけ」

「「夫婦じゃねえ!」」


 相変わらず騒がしい二人だ。


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