誰にでも秘密はある 3

 映画は面白かった。見ていてとてもハラハラしたし、犯人の狂気が伝わってくるような感じがしてとても興奮した。


 のだが…………。


「マインドコントロールって怖い……私素直だからすぐかかっちゃいそう……」


 と呟きながら僕の手を握ったままだ。映画が終わってからずっとこの調子なのでこっちが先に参ってしまいそうだ。

 ……マインドコントロールか。


「優姫さん。マインドコントロールなんて優姫さんの『魅了の眼』に比べれば恐ろしくもなんともないですよ?」

「そう? ……って失礼なこと言ってない?」

「え? 優姫さんの『魅了の目』ならマインドコントロールにかかる前に魅了チャームをかけられるでしょう?」

「そっか、そうよね!」


 見事に引っかかってくれた……。ちょろいというか、御しやすいというか。

 いい意味でも悪い意味でも素直だな……。


「それより、お腹空いたからお昼ご飯にしよ」

「何食べますか?」

「どうしようか……」


 優姫さんが周りを見回す。いやさすがにここにはないでしょ……。映画館から出てすぐだし。

 すると優姫さんが店を見つけたのか僕の裾を引っ張った。


「ねえ、あれ……」

「……どれですか?」

あかねじゃない?」


 茜? 店じゃなくて藤崎先輩?

 優姫さんの指さしたほうを見ると人ごみの奥にカップルが見えた。とても仲良さそうに笑い合っている。

 女性のほうは間違いない、藤崎先輩だ。


「声、かけますか?」

「行ってみよ、相手が誰か気になる」

「わかりました」


 人混みをかき分けて進んでいく優姫さんを追いかける。

 藤崎先輩に恋人がいるイメージがなかったので内心はすごく驚いている。が、それよりもどんな彼氏なのかという興味のほうが勝っている。

 見た感じでは身長は180センチ近く、顔は優男風。日本人離れした身長の高さ……ちょっと分けて欲しいくらいだ。


「茜」

「え? 優姫!?」

「彼氏とデート?」

「ち、違うのっ」


 優姫さんが声をかけたと同時に藤崎先輩はうろたえて顔を赤くしてしまった。

 意外だ……。あのクールな藤崎先輩が赤面するなんて……。

 彼氏さん(?)も驚いたように目を丸くしている。


「違うの?」

「こいつは私の兄! 兄妹だからっ、彼氏なんかじゃない!」

「こいつ呼ばわりはひどいなあ、茜」


 藤崎先輩の頭に手を置いて彼氏、ではなくお兄さんが言った。低い声だが声色が優しい。

 藤崎先輩はそれを優しく払って深く息を吐いた。


隼人はやともこの状況でそれはやめてよ……」

「ごめん、もうしないよ」

「仲良いんですね。まるでカップルみたいです」

「島村くん……追い打ちをかけないで……」


 俯いてしまう藤崎先輩。対して照れ笑いを浮かべるお兄さん。


「そうだ、お昼時だしみんなで一緒に食べないか?」

「いいですね」

「私も賛成です」

「なら、仕方ないか……」


 満場一致(?)でランチ決定!

 1組は兄妹だけど。細かいことは気にしないことにしよう。


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