欲求不満な先輩 2
午前の授業を終えて僕と達也は食堂に来ていた。
この学校の食堂はそこまで大きくないので弁当の人は入れないことになっている。桜がそれだった。
「あのうるさいのがいないのはいいな」
「お前がうるさくさせてるんだろ……」
「まあ、そんなことより昼飯だ。何にする?」
「僕は……カレーでいいや」
「俺はいつもの」
「日替わり丼定食だろ?たまには違うのにしろよ」
「毎日違うからいいじゃんか」
僕はため息を吐き、半ば諦めながら言う。
「なんでそういうところだけ怠慢になるのか」
「優柔不断なんだよ」
言い訳にならないような言い訳を言ってお盆を受け取り、席を探しに行ってしまった。
~~~
案外早く食べ終わってしまってすることがなくなってしまった。
昼休みが終わるまで20分もある。平和だ。
「次の授業、世界史だったよな?」
「そうだと思う」
「小野先生か、眠くなりそうだな」
「そうだね」
教室に戻りながら達也との会話をする。僕は適当に返事を返しているだけだが。
世界史か……。縄文?弥生だっけ?
もう眠くなってきて頭が回らない。
「島村くん」
幻聴か?先輩の声が聞こえたような……?
ちょっと目がかすんで焦点が合わない。
「遼?昨日の先輩だぞ?」
「え?」
慌てて目をこすり頭を振り、頭を再起動する。
すると目の前には香川先輩。右上には怪訝そうにこちらを覗き込む達也。
「か、香川先輩。どうしたんですか?」
「ちょっと来てくれる?」
先輩が小首をかしげる。
達也が耳打ちをしてくる。
「お幸せにな、ちくしょう」
達也はちょっと悔しそうな声を吐いてさっさと去ってしまった。
ちょっと達也……。置いていかないでくれよ……。
「じゃあ、行こ?」
「どこに?」
「屋上階段」
そう言うなり先輩は僕の腕を引っ張る。今日は手で腕をつかんでいる。
しかし僕には拒否権がないらしい。女の子に逆らうなんて怖いのでしませんけど。
先輩も人のいる場所がわかっているみたいだ。
水上高校は屋上に出ることはできない。つまり屋上に上がる階段は普段使われない。掃除はされているといいけど。
「先輩、何をするつもりなんですか?」
「あとで教える」
先輩が歩みを速める。
僕は足をもつれさせながら何とかついていく。
「先輩、焦らないでください。逃げないですから」
「……わかった」
一安心したところで他の感覚が身を包む。
だから僕を睨まないでください……。僕のせいじゃないですから、先輩のせいですから……。
「それで先輩、何の用ですか?」
「ちょっと、話があって」
先輩、目が泳いでます。どこを向いても誰もいないですよ?
先輩って意外と恥ずかしがり屋?
「…………先輩?」
「えっとね、血が欲しいと思って」
「……は?」
この前の僕の気絶で懲りたと思ってたのに。
僕の読みが間違ってたのか?
「お母さんが島村くんをキープしておいたほうがいいって」
「……僕は彼氏候補ですか?」
「それに吸われるほうも気持ちいいって」
「それはどこ情報ですか?」
「お母さん……」
先輩のお母さん、やめてください。先輩に変なことを吹き込まないでください。
おかげでかなり微妙な気持ちになっちゃったじゃないですか。
「そこに先輩の意思は――」
「ある。島村くん美味しいから」
食い気味に言われてしまった。
親父から女の子のお願いは聞くものだと言われている。
断れないじゃないか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます