似た者同士 1
学校の最寄り駅で降りて十分ほどで先輩の家に着く。
前に行ったので道順も覚えていた。
「それじゃ、また明日ですか?」
「うん」
遠めにおかえりさないと先輩のお母さんの声が聞こえる。
出汁の匂いがする。多分の香川家の夕飯だろう。
僕も家に帰って何か作ろう。
「では、帰ります」
「ばいばい」
手を振って見送ってくれる先輩。
僕も振り返して、振り向いて元の道を戻る。
一歩踏み出したところで止まった。
なぜなら、すぐ近くに男性が立っていたから。
男性は目を見開き口も半分開いて固まっている。
何にそんな驚いているのだろう。僕の顔?あいにく見覚えはない。
と、いきなり男性が僕の肩をがっしり掴み――
「君は
と聞いてきた。
~~~
――五分後。
僕は再び香川家の食卓に座っていた。
何が始まるのか……。身を固くしてしまう。
「えーと、自己紹介から。僕は
向かいに座るさっきの男性――雄介さん――が話を始める。
なんだ、先輩のお父さんだったのか。ついでにお母さんの名前は詩織さんみたいだ。
「君は?」
「僕は水上高校一年、
「私の後輩、ちょっと仲がいいだけ」
「そうか、なんだ……」
「雄介さん、何を期待したのかしら?」
露骨に落ち込む雄介さんに詩織さんが横から覗き込む。
仲のいい夫婦なんだな。
先輩は不機嫌そう、僕はポーカーフェイスで確認。
「浮いた話一つない優姫についに彼氏ができたのかとはしゃいでしまって……」
「か、彼氏じゃないって」
「ゆきちゃん、顔が赤いわよ?」
「…………」
そこは男親ならそんなのは認めんとか言うところじゃないのか?
なんかこの家族、先輩といい雄介さんといいズレてるな。
「それでなぜ僕がここに呼ばれているんですか?それだけなら玄関先でも出来ましたよね?」
あの後なぜか詩織さんまで出てきて上がってもらいなさい、と言って素直に従ってしまった。
「それなんだけど……」
雄介さんが出されたお茶を一気に飲み込み、立ち上がった。
「島村くん、ちょっと二人でいいかな?」
男同士の話し合いというわけか。
一回やってみたかったんだよね。
「わかりました」
「じゃあ、寝室を使うね」
「わかった、こっちは女同士でね?」
「え……」
先輩、がんばれ。負けないで。
「それで優姫とはどういう関係なんだい?」
雄介さんが後ろ手にドアを閉めながら聞いてくる。
クイーンサイズのベッドのある部屋だから香川夫婦の寝室だろう。
詩織さんにもさっきそう言っていた。
「学校の先輩後輩です」
「他には?あ、そこ座って」
「はい、でも他にって言われましても」
「恋愛感情は?」
「ないです、嫌いではないですけど」
雄介さんはベッドの横にあるテーブルとセットの椅子に座った。
僕は化粧台の椅子に腰かけている。
「君は、男女間の友情はあると思うかい?」
「僕はあると思います」
「じゃあ優姫と友達になりたいかい?」
「ちょっと違いますね」
雄介さんは眉をひそめる。
僕は深く息を吸って語り直す。
「恋愛感情のない友達以上恋人未満の関係になりたいと思っています」
「ほう?」
雄介さんの口角が上がる。
「わかった、じゃあなおさらだ」
「それはどういう――」
「優姫と付き合ってくれないか?」
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