ウチのパーティに魔王がいるんだが【リレー小説 正規ルート編】

るーいん

パーティ結成!

魔王のお兄ちゃんになってしまったのだが

第1話 パーティ結成! 勇者×魔王

 俺は新米勇者アーティ。

 勇者といってもそんなたいそうなもんじゃない。

 魔王を倒すということを目的とした冒険者の総称が勇者なのである。

 なんで魔王を倒す名目の冒険者になったかというと……まぁ、単純に暇だったから。というかうちのババァに追い出されたからだ。働かざるもの食うべからずってな。

 そう、勇者になる前の俺の職業は無職。もちろん、剣なんか握ったことすらなかったさ。ぶっちゃけ、生活に困っていた俺は、わずかばかりだが支給される支度金目当てに冒険者ギルドに勇者として登録したってわけよ。

 それで初期装備を買い、町の近辺の最弱モンスターを倒し、素材を集めてそれを売って生計を立てていた。

 レベルが3になり、ちょっとだけ貯金のできた俺は、より多くの金を稼ぐために次の町へと旅立つことを決意した。

 一人だと心細いので、俺は貯金を使い、パーティを結成することにした。酒場に行き、冒険者を探す俺。

 しかし、この町を訪れる冒険者は少なく、いるのは俺と同じく仕方なく冒険者になったようなヤツらばかりだ。俺が言うのもなんだが、とんでもない世の中になっちまったもんだぜ。


「あ、あの。ボクとパーティを組んでもらえませんか?」

「うるせー、ガキはあっちに行ってろ!」

「あう……あう」

 少女が、ゴロツキみたいな冒険者にしっしっとあしらわれている。

 髪、そして瞳の色はグリーン。ボロボロのたびびとの服を身に着けて、道具袋を背負っている。背は低く、顔も幼い。その割には巨乳だ。あと、なんか、角みたいのが生えている。

 まさか、魔族か? そんなわけない。いかつくてごつくて恐ろしい魔族がこんなところにいたら、とっくに町は壊滅している。亜人か何かだろう。あ、こっちに来た。


「あ、あの! ボクとパーティ組んでもらえませんか!?」

「いいよ」

「……あう。えっ!? いいんですか!?」

「きみ、レベルいくつ?」

「え、あ? レベルって?」

 わからないってことは冒険初心者か。俺もわからんかったしな。

「ギルドに登録すると、青い手帳みたいなのもらえたと思うんだけど、持ってる?」

「あ! は、はい! これですか!?」

「その青い手帳には、自分の能力が数値化されて記されているんだ。強くなると、自動的に更新される、謎の手帳だ」

 本当にどういう仕組みなのかわからない。呪われたアイテムなのかもしれない。捨てられないし。

「えっと……レベル、2です」

 俺は最初1だったなぁ。ははは。

「ちょっと見せてくれる? ええと……」

 能力は普通だった。ただ、なぜかMP(まじっくぽいんと)だけが黒く塗りつぶされたかのようになっている。

 スキルは今のところ開花していない。使用できる魔法はヒールという回復魔法のみだ。

「それと……バスト93……ウェスト」

「ばすと?」

「おっぱいの大きさ」

 ばしっと手帳がはたかれた。少女が真っ赤になって自分の手帳を拾う。

「そ、そんなことまで書かれているんですかこれ!? も、もう見ないでください!」

「ごめんごめん。これ、俺の手帳。で、どうする? 見ての通り、俺、弱いけど……パーティ組む?」

「お、お願いします!」

「わかった。それじゃ、ちょいとギルドに申請しに行こう。あ、俺はアーティ。よろしくな」

「ぼ、ボクはミーアです。よろしくお願いしますアーティさん!」

 ミーアはにこっと笑った。



 ――まさか、何かの間違いだよな。


 俺はさっき見たミーアの手帳の中にありえないものを見ていた。




 しょくぎょう:まおう




 そうだ。見間違いだ。

 こんなにかわいい子が魔王のはずがない。


 俺は深く考えるのをやめた。


 ギルドでパーティの申請を出した俺たちは、町を出た。

 最初の目的地は、ここから一番近くの町ルゴーだ。初めての遠出。まぁ、レベル3と2ならもはや楽勝だな。

 そう思っていた俺に、とんでもない出来事が襲いかかってくるのだが、それはまた別の話。




つづく!

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