第68話 母

 ありえないことは続く。


 きゃりんという短く高い音が聞こえたかと思うと、なんと……なんと、あの、巨大なアイアンマイマイが真っ二つになり、消滅したのだ。


「ふぅん、やっぱり“石喰い”が巣くってたか。まさかこんな辺境の地で、また見ることになるとはねぇ」


 その人物は身の丈くらいある大剣を軽々と振り、俺たちの前まで歩いてきた。


「あ、あ、あ」




「何呆けているんだい……バカ息子」


「どうしてこんなところにいるんだよ! ババ……じゃなくて、母さん!!!」


「「……母さん!?」」

 ミーアとレインの声がハモった。


「ちょ、しかもなんてカッコウしているんだよ! 自分の年齢考えろよ! 恥ずかしくねーのか!」

 うちのクソババアもとい母さんは、かの伝説の女戦士が身にまとっていたと言われる通称“ビキニアーマー”を装備していた。そういや子供の頃、一度だけ着てるの見た記憶が。どうでもいいけど、露出が多く、どう見ても防御力低いよな、あれ。


「あぁん? 仕方ないだろ、これしか戦闘用の装備持っていないんだから」

「戦闘用って……そもそも、え? 母さん、戦えるの? え? どういうこと?」

「あー……まぁ、昔ちょっとね。それよりアンタ、少し顔つきが逞しくなってきたじゃないか。ほんの少しだけ」

 と、母さんは目つきを鋭くした。


 ブロロロロ……と、アイアンマイマイがあちらこちらから現れる。


「あれは本来、暗黒世界にいる“石喰い”ってモンスターだ。鉱石が好物で、ダイヤモンドもいとも簡単にかみ砕くヤツさ。ほいっと」

 母さんが剣を振ると、まだ遠くにいるアイアンマイマイ(石喰い)が紙みたいにすぱすぱっと切れて落ちていく。


 ミーアもレインも、俺も目が点になる。


 何が、何が起きているのこれ!?

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