第60話 アーティ、死す!?

『「三倍強化トリプル――激・雷突っ!!!」』

 雷のような光を纏ったレインの鋭い突きが、アイアンマイマイにぶつかる。

 なんと、アイアンマイマイの巨体が宙に浮き、後方の地面に転げ落ちた。

「……ぐっ」

「レイン!!」

 レインの身体のあちこちから、血が噴き出す。

「――ヒール!」

 ミーアがすかさず、回復魔法をかける。

「やはり……三倍強化魔法は身体に負荷がかかりすぎるか。足が、動かぬ」

 レインの足ががくがくと震えている。傷は回復しても、身体の内部へのダメージは大きいらしい。

 衝撃を受けたアイアンマイマイは驚いたのか、殻の中に入り込んでいる。態勢を整えるなら、今か。でも、体勢を整えたところで……どうにかなる相手ではない。


 そこにアルテナがやってきて、鞄の中から、あの青い液体の入った瓶を取り出してレインに手渡した。

「あっちはあらかた倒したけど、キリがないわねー。どうやらあの“アンノウン”が他のモンスターをひきつけているみたい。逃げるなら今の内よ」

「……俺は……」


 逃げる。つまりそれは、シルヴィアを見捨てるということに他ならない。


 ――どんなことがあっても、仲間を見捨てるんじゃねーぞ。


『あの人』の声が聞こえたような気がした。


「逃げないの? ま、いいけど。アタシは逃げるからねー。それじゃ――あっ!」

「お、お兄ちゃんっ!!」

「避けろっ! アーティ殿っ!!」


「え?」



 見上げる。



 巨大な鉄塊……アイアンマイマイが落ちてくるのが、見えた。




 ぐしゃり。


 何かが、潰れるような、音が、聞こえた。

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