第22話 音 

 俺の身体が瞬時にミーアの前に出る。

 これは俺のスキル『妹をかばう』だな。自動発動オートスキルなのね、やっぱり。

「邪魔」

 髪の長いやろうは、容赦なく俺を殴った。ガンガン殴りつけてくる。かなり重たくて痛い拳だが、スキルのおかげで守備力が本当に大幅に上がっているようで耐えることができた。

「こいつ……コロス」

 こいつ、今コロス言った!? 両手にはどこから取り出したのかナイフが握られている。本気だこれ。

「それ以上は許さないわよ」

 シルヴィアが男の後頭部に矢の先端を突きつける。

「ちっ」

 髪の長い男は、ゆらりと音もなく遠ざかっていく。なんて不気味なやつだ。

「お兄ちゃん、大丈夫!? よくもお兄ちゃんを……もう、怒った! イフリートおじさん呼んでこいつら消し炭に」

(ちょっ、ミーア。大騒ぎになるからやめて。俺なら大丈夫だから)

「う、うん」

 あやうく大変なことになるところだ。あれは最終手段だ、最終手段。

 気分的にはぶちかましてやりたいところだけどもな。っていうかミーア怖いな。


「けっ、つまんねーの。こんなの相手にするだけ時間の無駄だな。エルフのねーちゃん、その男に嫌気がさしたら、いつでもオレらんところに来な! ま、どうせモンスターに食い殺されることになるだろーけどな。けけけっ!」

 そう言って、連中は去っていった。あの髪の長い男だけは、最後の最後までミーアをじいっと見ていた。なんだったんだ、あいつらは。

 なんとも気分が悪い。しかし、相手にされずに済んでよかった。レベルが違い過ぎる。

 俺は感覚がなくなり、青くはれ上がった腕を見てそう感じた。

「お兄ちゃん、腕が……!! すぐに回復するね!」

 ミーアが気づき、回復魔法をかけてくれた。


「ほんっと、情けない!」

 シルヴィアがづかづかと俺の前に来た。

「アンタ、あれだけやられて悔しくないの!? どうして立ち向かわなかったのよ!?」

「いや、その」

「あーあ、もう! 話にならないわ! ホントどうしてこんな男と……」

 そんなシルヴィアに向かってミーアが何かを言おうと口を開こうとするのが、ゆっくりと見えた。

 その前だった。俺の中で何かがぷつっと切れてしまうような音が聞こえたのは。

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