第25話 燃えよ! アーティ!

「あははっ! ちょ~うける! 燃えてる、あいつ燃えてるよ!」

 そう。俺は燃えている。文字通りに。

 正確には、俺の装備が燃えているのだ。

 魔法剣の応用をやってみた。無理やり装備に炎属性を付加――つまりミーアの炎の魔法を全身に受けてみたのだ。

「あ……アーティ?」

 唇から血を流しているシルヴィアが身体を起こす。あの野郎……顔を殴ったのか。服のところどころが破けているし、傷だらけだ。

「ミーア。シルヴィアに回復魔法を」

「う、うん」

(……どうしてこんな……)


 ?

 ミーアが小声で何かを言っていたようだが、聞き取れなかった。

「くく、くくく。邪魔を……邪魔をスルナァァァ!」

 ――っ! 紅い瞳。

 こいつ、人間じゃないのか?

 だが、そんなことは関係ない。

 炎を纏った俺は、全力で黒い髪の男に体当たりした。

「ぐくっ……炎。ならば」

 冷たい風が俺に突き刺さる。装備に宿った炎が、消えてしまった。

「くくく、これでキサマは……ぐおっ」

 俺の拳を再びやつの顔面に叩きこんだ。俺は今日、初めて人(ではないかもしれないが)を殴った。しかも2回も。

「コロス、ころす殺す殺す殺す! コロース!」

 男がどこからともなくナイフを取り出した。数本のナイフは宙に浮いている。魔法か?

 こうなると俺に打つ手はない。しかしどういうわけか、俺の身体は前に動いた。痛みで震える手で剣を握り、叫び、気持ちを奮い立たせる。腕に力を込める。

 俺は地面を蹴った。


 俺はこいつを、絶対に許さない。



 白銀に光るナイフがすぐそこまで、迫っていた――。

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