第63話 精霊魔装

 アイアンマイマイが、ブロロロロロという不気味な音を立て、岩壁から這い出してきた。

 伸びた触角についている目が、大きく見開かれる。



「――大精霊魔装――うそでしょ!?」

 アルテナが驚いている。

 せいれいまそう?


 とにかく、全身が熱くて痛い。

 前に魔法剣の応用で、炎の魔法を全身に纏ってみた時と同じ要領でやってみたのだが、どうやら上手くいったみたいだ。

 例の手帳には確か、『自分の能力よりもかなり上の魔法を受けると数倍ダメージを受ける』と書いてあったが、これは大丈夫そうだ。


 自分の姿よく見えないが、俺は何か赤い鎧みたいなものなどを身に着けているみたいだった。


『……これは驚いた! 魔力なしに我が力を制御するとは! しかしニンゲンよ、もって十数秒だ。それ以上はキサマの身体がもたんぞ』


 十数秒あれば、十分。

 身体が、自然と動いた。


 誰かが


 俺の背中を支えてくれている。

 それも、一人じゃない。


 何故だか、そんな気がした。


 真紅に染まった俺の剣が、アイアンマイマイを一閃する。



 ――ブロロロロロロロ……!

 アイアンマイマイが奇声を発した。


 その次の瞬間。アイアンマイマイの殻は、ずるりと綺麗に両断されて、地面に落ちていった。両断面が発火し、激しい炎が瞬く間にアイアンマイマイを包み込んでいく。

 アイアンマイマイはどろりとした赤い液体となり、やがて消えていった。



 終わった……のか?


 俺の纏っていた赤も消え、空洞内に静けさが戻っていた。



 膝から力が抜け、俺はその場に座り込むのだった。

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