第47話 おもちゃ

「これは……想定外ですね」

 “ゲート”を通過させられたサイクロプスは最弱のものであったが、それでも並みの勇者や冒険者の敵うレベルではなかったはず。

 こうなれば、立て続けにモンスターを送り込み、確実に始末するまでだ。


「悪いね~、ヨシュアっち。ゲート、閉じさせてもらったよ~」

 ぽん、と背中を叩かれて、ヨシュアは振り返る。

「貴様……っ!」

「そうそう、その顔。いつも冷静ぶっているけれど、やっぱそっちの方がお似合いだね~。ククッ、たかが人間一匹にずいぶんとご執心みたいじゃないか?」

 ヨシュアは応えず、男を睨みつけている。

「いや、キミが本当に執着しているのは、ミーアちゃんだったね~。そーんなに大事なら、ずっと籠の中に閉じ込めておけばよかったのに」

 クックックと笑う男を、ヨシュアは黙って見ている。余計な口を挟むと、面倒くさいくとになることをヨシュアは知っていた。感情的になって食ってかかれば、こいつの“思うつぼ”だ。


「ちぇっ、つまんないな~。もっとノッてくれなきゃ面白くない、うん、面白くない」

「……貴様、何を企んでいる」

「企む? キミはオレのことをよく知っているはずだろ~? オレはオレが楽しめればいいのさ~。ふむ、そうだね。さしあたって、あの人間……アーティと言ったっけ? で遊ぶとしようか。キミのおかげで、新しいおもちゃを見つけられて気分がいい。実に気分がいい!」

「干渉するつもりか? ならば排除させてもらう!」

「ははっ! そうこなくちゃね~! でも、今ここでキミと遊ぶつもりはないんだ。もったいないからね」

 ヨシュアは気づいた。気づいた時には遅かった。

「さっき背中叩いた時に、封印石をくっつけておいた。ごめんね~、キミのことをよく思っていない連中がいっぱいいてね。悪く思わないでくれよ。これはキミとミーアちゃんを守るためでもあるんだからさ~」

「……貴様……覚えていろよ」

 ヨシュアはその言葉だけを残し、消えた。

 男は封印石を拾い上げ、箱にしまった。


「これで当面はよしと。さて、と。もうすこ~しアーティくんの“中身”を視させてもらうとしようかな~」

 

 新しいこのおもちゃで、どうやって遊ぼうかな。男はにやにやと笑い、アーティを見ていた。

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