第19話 何言ってんのこの人

 フォルテナの町。

 この大陸で一番大きな町だ。とは言っても、そんなに栄えているわけでもない感じだ。この大陸、過疎ってきてるからなぁ、だいぶ。

 しかし、ここでならそれなりによい装備も手に入るはずだ。ミーアの服、何とかしてやらなきゃなー。いつまでもボロボロの旅人の服じゃかわいそうだ。本来なら杖よりもそっちを優先すべきだったのかもしれないが、結果的に杖を買っておいて正解だったな。あれがなきゃ、みんなマンイーターにやられていただろう。

 とはいえ、財布の中身が寂しいしなー。

 まずは冒険者ギルドに立ち寄り、依頼の情報などを確認しておくとしよう。パーティの人数も増えたし、登録情報更新しなきゃならないし。

 てなわけで、ギルドへとやってきた俺たちだったが……。


「冒険者さんたち、いないね」

「あ、ああ」

 中はガランとしている。カウンターには腰の曲がったおじいさんしかいない。

「よく来たのぅ、若き勇者たちよ」

 お爺さんはふるふる震えている。大丈夫か、これ。

「ここにはおじいさんだけしかいないんですか?」

 ミーアが訊ねた。

「うむ。話せば長くのるのじゃが……」

 そしておじいさんは、ぽつりぽつりと語り始めた。小一時間くらい。

 要約すると――


・大陸の冒険者が減少している

・大陸を訪れる冒険者が減少している

 (この大陸の鉱山で金や銀、そして名物である“風鳴石”の採掘量が大きく減少しているため)


「鉱夫たちも年々減ってしまってのぅ。何よりも問題なのは、鉱山に恐ろしいモンスターが棲みついてしまったことじゃ」

「恐ろしいモンスター?」

「うむ。アイアンマイマイじゃ」

「あ、アイアンマイマイ!?」

「お兄ちゃん、知っているの?」

「いや、変な名前だと思って」

「こいつは厄介なモンスターでの。こいつの鋼鉄の殻は、ちょっとやそっとの武器や魔法ではまるで通用せん。さらに攻撃を受ければ、傷口からこやつにくっついておる寄生虫が入り込み、体内が食い荒らされることになる」

 な、なんという恐ろしいモンスターだろう。俺は身震いした。

 これにはさすがのシルヴィアも険しい顔をしている。

 その唇がゆっくりと開いた。

「――よし、そのモンスター、倒しましょ!」


「えっ!?」

 驚く俺とミーアを見て、シルヴィアさんは、ふふふんと不敵に笑ってみせるのだった。

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