第53話 契 約

「……お願いします。力を、貸してください」

 俺は頭を下げた。


「――フフーン。思いのほか、決断はやいんだ。ウチ、高くつくよ? そだね、10万G+アンタの寿命5年分くらいで手を打とうかな。尚、ローン可」

「じゅっ……!?」

 10万!? 今、10万Gって言った!? それになんだ寿命5年分って!?


「わ、わかった。一生かけても払う」

 次の瞬間、じゅっと、俺の背中が音を立てた。

「あちっ!?」

「契約成立っと♪ そんじゃ、先に町の出口にいるから、準備できたらきてね。でも、あんまり待たせたら、気が変わっちゃうかもよ。それじゃまた……っと、アタシはアルテナ。覚えといて」

「あ、ああ。俺は」

「覚えるつもりないから名乗んなくていいよ。そんじゃ、また後でね」

 アルテナは手をひらひらさせ、ツカツカと行ってしまった。


「……お兄ちゃん。よかったの? あんなよくわからない子にお願いして……」

「シルヴィアを助けるためだ。今はすがれるものにすがるしかない」

 他に良い手が何も浮かばないし、実力不足を補う術もない。アルテナが信頼できるやつなのかはわからないが、それでも頼るしかない。

「アーティ殿の判断を信じよう。何かあれば、アーティ殿もミーア殿も私が守ってみせるさ」

「ありがとう、レイン。それじゃあ、準備して出発だ」


 俺たちは宿屋に荷物を取りに戻り、そしてアルテナの待つ場所へと向かうのだった。

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