第10話 そして新しい朝へ

「……なんですか、その目は」

 俺はヨシュアというこの男を睨んだ。

「命が惜しくないのですか?」

 ナイフの先端がちくちく痛い。

 命は惜しい。惜しいに決まっている。

 でも、俺はミーアの「お兄ちゃん」なんだ。

またお兄ちゃんを失うようなことになったら、きっと悲しむ。ミーアを泣かせるようなことをしちゃダメだ。だから、俺は引かない。

「ただの人間の分際で……。くっ!?」

 突然、俺とヨシュアの前の空間がバチバチと鳴った。肌がびりびりして痛い。

 ヨシュアは舌打ちをした。

 部屋がぐにゃりと歪んでいく。

「こちらからの干渉を絶ったか。命を削ってまで、この男を助ける理由でもあるというのか? まぁ、いいでしょう」

 ヨシュアの姿が薄れていく。しかし、その目の色だけは最後まで消えなかった。

「また会いましょう。その時まで、あなたが生きていれば……ですがね」

 やがてその声も消えていった。


 ――ん。誰かの声が聞こえる。


「お兄ちゃん! お兄ちゃんってば!」

 お兄ちゃん? ああ、俺のことだった。

「ミーア? どうかした?」

「どうかしたって……お兄ちゃん、大丈夫なの? すごいうなされてたよ」

「うなされてた? うわっ、すごい汗だ俺! そういえばなんか、怖い夢を見てたような」

 すごく怖い夢だったような気がするけれど、覚えていない。

「心配させてごめんな。大丈夫だから、休んでてくれ。汗ふいて、着替えてくる」

「う、うん」

 はて。

 前にも何か怖い夢を見たような、見てないような。

 うーん。

 思い出せないからいっか!

 

 そして夜は更け、次の朝がやってきた。

 また新たな冒険の始まりだ!

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