第37話 強制加入
「私が方向音痴? ははは、そんなことあるわけがない」
俺は遠回しに、状況説明の上、方向音痴であることを伝えたのだが……彼は認めようとはしなかった。この人、ホントに自分が方向音痴だなんて、微塵も思ってもみないんだろうなぁ。
「しかし、私ひとりで姫の捜索をするにはどうやら力不足であるということがわかった。そうだ、貴殿らは冒険者であろう? ひとつ、頼みがある。私に協力し、共に姫を探してはくれないだろうか。もちろん、報酬は出す」
俺はちらりとシルヴィアを見たが、やめておきなさいというような目を向けられた。
「ええと。申し訳ないが、今の俺たちのレベルでは力になれないと思う。まだまだレベルも低いし……」
「ふむ、ならば特別に私が稽古をつけてやろう! そうすれば貴殿らは冒険者として大きく成長することができるだろう!」
鎧の男は、はっはっはと笑っている。
なんか面倒な人を助けてしまったなぁ。
「仕方ないわね。今日はこれまでにして、いったん町に戻りましょ」
シルヴィアはやれやれといった様子でため息をついた。
「……」
「どうかしたか? ミーア」
「う、ううん。なんでもないよ、お兄ちゃん!」
何か一瞬、ミーアがすごい鋭い目つきで鎧の男を見ていたような……気のせいかな。
俺たちは鎧の男を連れ、ダンジョンを出た。
俺たちはこの鎧の男のせいでかなりな面倒ごとに巻き込まれることになるのだが……
それはまた、別のおはなし。
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