第26話 止まった時間の中で
不思議なことが起こった。
俺に突き刺さるはずだったナイフの動きが止まった。いや、他のナイフも――それだけじゃない。何もかもすべての動きが止まっていた。
俺は空中で止まっているナイフをこんこんと叩いてみた。ナイフは少し動いたが、また静止した。
何が起こっているんだこれ?
とにかくだ。今がチャンス。俺は髪の長い男のみぞおちあたりに拳を叩きつけた。とりあえず何発か思い切り叩いておこう。
さすがに剣で刺したり斬ったりするのは何だか気が引けるのでやめておいた。自分の命がかかっているのにそんなゆとりがあるのかって? 仕方ないだろう。モンスターはともかく、人(じゃないかもしれないが、こいつは)を斬ったことはないしな。
……何秒経ったのかわからない。誰も動かない。
この髪の長い男も、いくら叩いても動かない。
……まさかずっと止まったままじゃないよな、俺以外。
「大丈夫。それはない」
「そうだよな……よかったーって誰だ!?」
何もかもが静止しているところに現れたのは、口の部分だけが開いた妙な仮面をつけた子供? だった。
「ちょっと貴方と話したくて。質問1。貴方にとってミーアはどんな存在?」
「え? あ? 何? え、えーと……妹、かな」
義理というか何というか成り行きでそうなった感じの。
「質問2。この先何があってもミーアを見捨てずに一緒にいられる?」
こいつ、一体何なんだ。
よくわからないが……俺は、こう答えてやった。
「当たり前だろ。何があっても見捨てるもんか」
それを聞いた子供は、にこっと笑った。
「よかった。その言葉、忘れないでね」
子供の姿は、すっと消えていった。
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