第67話 決死の覚悟!

「諦めるな! まだ、終わりじゃない!」

「……アーティ殿」

「ミーア、もう一度、杖を……貸してくれ」

 俺は動けなくなっているミーアの手から杖を取った。


「……レイン。万が一の時にはこれを。この鞄の中に薬草が入っている。必ず、届けてくれ」

「アーティ殿? 何を……」


 杖を持つ手が熱い。頭がギリギリと痛む。

 


 ――力を放てば、死ぬぞ。



 イフリートが言う。

 それでも、やるしかない。俺がやるしかないんだ。



 ふと。


 俺の手の上に、ミーアの手が重なる。


「お兄ちゃん……ボクの力も使って! 2人なら、きっとやれる!」

「ミーア……ありがとう!」

 さらにその上に、レインの手が置かれる。

「足しにはならないかもしれないが、私の微力な魔力も送ろう。ここまで来たのだ。最後の最後まで、力を合わせて戦おう」

「レインも……ありがとう」

「礼を言うのはこちらだ。アーティ殿の勇気のおかげで、心が折れずに済んだ」

 俺たちは互いに顔を合わせ、そして頷いた。

 

「イフリートよ……俺たちに力を貸してくれ!」


 杖が真紅に輝き、巨大な炎が現れた。

 

 身体中が痛い。手からじゅうっという音がして、肉が焦げたようなにおいがしてきた。

 力が、制御、できない。

 視界が、真っ暗に、真っ赤に、真っ白に……溶けて、いく。



 意識が、


 弾け、る。



 駄目か。駄目なのか。


 そう思った、その時だった。




「ちょっと見ない間に、少しはまともになったみたいじゃないか。でも、まだまだだね。仲間を守りたきゃ、もっと強くなりな!」


 その声を聞き、意識が一瞬にして引き戻される。


 なんで……なんでだ!?

 ありえない。こんなところで、その声を聞くなんて、ありえないことだった。


 意外な……いや、俺にとっては意外でも何でもない人物の登場に、俺は愕然とするのであった。

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