第65話 希望、そして――

 巨大な岩に、頼りなく生えているそれを、俺は発見した。

 これが例の薬草か。俺はそれを岩から抜き、鞄にしまった。

 あとはこの鉱山から抜け出すだけだ。しかし、そう簡単にはいきそうにない。

『あぁぁぁ……にく、にく……』

『お腹がすいたよぅ』

 リビングデッドがわらわらと現れ、周囲を囲んでいる。あちらこちらから、アイアンマイマイの奇声も聞こえてくる。

「道を……開けろっ!」

 俺はリビングデッドを弾き飛ばし、進む。しかし、数が多くて思うように進むことができない。

 ここで手を、足を止めては駄目だ。

 息が苦しい。肺が焼けるように痛い。腕も足も上がらない。

 怖い。痛い。苦しい。

 何でこんなに苦しまなくちゃいけないんだ。何もかもを投げ捨てたくなる気持ちがわいてくる。

 その度に誰かが言う。


 ――諦めるな、と。

 

 突然、目の前のリビングデッドが爆発した。この炎の魔法は――。


「お兄ちゃん! 大丈夫!?」

「……ミーア……! なんで……」

 さらに。

 周囲のリビングデッドの頭が飛んでいく。

「アーティ殿。勇気と無謀をはき違えてはならないぞ。貴殿は一人ではない。私たちは仲間だろう? もっと頼ってくれ」

「……レイン!」

 2人が俺の横に立つ。

 

 身体に力が戻るのを感じた。

 ――俺は、涙と汗を拭った。


「……よし! 一気に行くぞ!」

「うん!」

「道は私が斬り開く!」


 俺たちの士気は高まる。



 しかし、それだけで切り抜けられるほど、現実は、甘くはなかった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る