第57話 出現
レインは瞬く間に残りのリビングデッドを倒していた。
全て、首をはねている。それでもう、リビングデッドは動けなかった。
「ひゅぅ! なかなか強いじゃん、あの騎士さん。それで、どうすんの? 怖気づいたなら帰る?」
芋虫を全て焼いた俺に向かって、アルテナは言う。
「……ここまで来て、退くわけにはいかない」
「……あ、そ。でも、この鉱山広いんでしょ? 闇雲に動き回ってもダメなんじゃない?」
「地図なら、持ってきた」
「――へぇ!」
アルテナが驚いたように目を丸くする。
『難しいダンジョンに挑戦する前にゃ、事前準備をしっかりしねーと駄目なんだぜ! 覚えておけよ!』
俺は、今になって『あの人』の教え……というかほとんど一方的なものだったけれど、それを色々と思い出していた。
そういや、モンスター図鑑とかくれたのもあの人だったっけな。だから、知識だけはそれなりに持ち合わせているというわけだ。
コンパスは正常に動いている。俺は町の医者から借りた鉱山の地図を確認する。
「よし、アーティ殿。地図を貸してくれ。私が先導しよう」
「い、いや、ここは俺が」
「む、そうか。そうだな、任せたぞ、アーティ殿」
何か納得したように、レインは下がった。というか、重度の方向音痴のレインに道案内をさせたらかなりやばいことになりそうだ。
以前に薬草が採れたという場所もチェックしてある。まずはそこに向かってみるとするか。手強いモンスター……特にアイアンマイマイに遭遇しなければいいのだが。
坑道を進むと、どんどん広くなっていくのがわかった。道を抜けると、かなり開けた空間に出た。
この大きな空洞は、かつて大量の鉱物が見つかり、発掘作業の中心の地点となった場所だという。薬草が採れた場所は、この先にある。
不気味なほどの静けさだった。何の音もしない。
「――お兄ちゃん、ここ、何かいる。怖い」
ミーアがガタガタと震えている。しかし、何の気配も感じられない。
ぴちょん。
ぴちょん。
前方に、何か雫のようなものが落ちて、跳ねた。
何だろう。そう思い、上を見上げた。
そして
そいつは現れた。
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