第45話 疾風迅雷

 「疾風! 迅雷!」

 レインがサイクロプスの咆哮に負けない雄たけびを上げる。

 サイクロプスの振り下ろされた棍棒に、レインの放った突きが激突する。

 何と、棍棒が跳ね上がり、サイクロプスの態勢が崩れる。


 レインが地面を蹴り、跳躍する。

「爆雷っ!!」

 雷が落ちたような轟音が響く。

 次の瞬間、サイクロプスの膝が落ちた。


 あ、圧倒的じゃないか……あのサイクロプスを相手に。すごい。

 しかし、レインの表情は険しい。尋常じゃないほどの汗が、顔から滴り落ちている。

「……やはり、そう簡単には倒せぬか」

 レインは肩で息をして、苦々しくつぶやいた。


 サイクロプスのひとつ目が、大きく見開かれた。真紅に充血した目が、レインの姿を捉える。


『オォオオォオォオォオオオオ!!』

 先ほどとは比べ物にならない大声が、大地を震撼させる。


 レインはサイクロプスの右手側に跳躍し、距離を取った。

 立ち上がったサイクロプスが、ゆっくりとレインの後を追う。


 ――逃げよ。


 俺を見たレインの口が、そう動くのがわかった。

 身体は動く。逃げるなら今しかない。

 逃げる? レインをおいて?


 俺は……俺は……。

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