第5話 どうするお兄ちゃん!?

 ミーアはぷるぷると震えている。怒っているのだろうか。

 でも仕方ないじゃん! 俺、男の子だし!


「アーティさん、ボク、やりました! これまでずっと練習してたのに、全然使うことができなかったファイアを使うことができました! アーティさんのおかげです! ありがとうございます!」

 ふぅ、よかった。怒っているのではなかった。

 俺の両手を取り、ぶんぶんと振るミーア。とても嬉しそうだ。笑顔が輝いて見える。笑顔が弾けるというのはこういうことを言うのだろうな。

「よかったな、ミーア」

「うん、ボク、やったよ、おにいちゃん!」

 なーんにもしてないんだけどね、俺。逃げて、矢を受けて、エルフの裸を拝んだだけなんだが。

「って、おにいちゃん?」

「あ! あう……あう。ごめんなさい、アーティさん、ボクのおにいちゃんに似てるから、つい……」

「そうなのかー。俺に似ているお兄さんか、一度会ってみたいな」

 世界には同じ顔をしたヤツが3人はいるって話だからな。ミーアのお兄さんはきっと、俺と違って素晴らしい人なんだろうな。

「ミーア!? ど、どうしたの?」

 ミーアがうつむいて、急に泣き始めてしまった。涙がぽたぽたと地面に落ちていく。

「お兄ちゃんは……病気で……ひっく」

 おおぅ、困った。これは困った。おろおろですよ俺。はたから見れば完全に俺が泣かしているように見えるし、女の子が泣いた時にどうしていいかなんかわかんないし! 難易度S級のクエストきたこれ!


 どうする、俺!

 さぁ、どうするんだ俺!!!

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